約 1,837,664 件
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/73.html
閃光 ◆caxMcNfNrg 青空を突き抜けるように、箱庭に轟音が響き渡る。 他の空間から隔絶された、殺し合いの盤上。 草一つ無い荒地で、森を背にして青いMSが火器を連射している。 「ったくよ・・・ゲームに乗ってない奴は、ここには居ないのか?」 コクピット内に響く、モンシアのぼやき。 その視線は、モニターに移ったMSを追っている。 ・・・奇しくも、こちらと同じガンダムタイプである相手。 空を飛び回るそれに向けて、ミサイルやガトリングガンを放つ。 しかし相手は、迫りくるミサイルを難なくかわす。 ガトリングガンに到っては、数発当たりはするものの、 特殊装甲か何かなのか、その身に傷一つつける事はない。 そのままの勢いでこちらに接近してくると、相手は頭部からビームを放った。 「うおっ!・・・さっきの奴よりゃ、やるみてえじゃねえか」 相手の攻撃を辛うじてかわす。 口ではそう言うものの、それほどの余裕がある訳でもなく・・・ (できれば、こいつは取っときたいんだがな) そう考えながら、モンシアはホーミングを数発放った。 ヘビーアームズから伸びる、数条の軌跡。 それは、曲がりくねった進路をたどり、敵のガンダムへと迫る。 しかし・・・命中する直前。 MAへと姿を変えたガンダムが、光の間をすり抜ける。 敵機の後方で爆発四散するミサイルに、モンシアは軽くしたうちをした。 (チッ・・・このままじゃ、ジリ貧か・・・ガトリングはきかねえし、ミサイルは避けられる・・・) 相手の攻撃を何とか回避しながら、考える。 「ホーミングに到っては、自滅と来たもんだ」 先ほどの光景を思い出し、モンシアは再び舌打ちをする。 (なんか方法はねえのか・・・いや、まてよ・・・) (思った以上に弾数が多いか・・・) 上空を飛び回るMS―レイダーの内部で、ヒイロはそう一人ごちた。 モニターに映るのは、彼の知る機体・・・ヘビーアームズの、おそらくカスタム機であろう機体。 (TP装甲ならば、問題はないはずだが・・・念には念を入れる) そうして、ヒイロは相手を牽制しつつ、その弾薬が切れるのを待ち続けていた。 (・・・なんだ?) 不意に、ヘビーアームズからの攻撃がやんだ。 見ると、相手の機体は攻撃をやめ、じっと佇んでいる。 (弾切れか?・・・いや、あれは・・・) モニターを通して、胸部の装甲が開かれるのを確認する。 やがて、ヘビーアームズは全身の火器を全て露出させ・・・一斉に火を吹いた。 (そうきたか・・・だが) ヒイロは迫り来るミサイルの間を、軽やかにすり抜ける。 通り過ぎたミサイル二基が後方で衝突、四散する。 その様子を確認することもなく。ヒイロは次のミサイルへ向かい・・・ それが、己の側方で爆発するのを見た。それだけではなかった。 上で、下で、右で、左で、後ろで・・・自機の周囲を爆発が覆う。 同時に、正面から迫る無数の弾幕を確認し、ヒイロは相手の狙いを理解した。 「ひゃっほう!これなら逃げらんねえだろ!」 上空で起こった爆発を確認し、モンシアは手を叩いた。 彼の取った作戦は単純。 ミサイル同士をぶつけ爆発の壁を作り、相手を閉じ込めた上での全弾連射。 「ありったけを食らわせてやったんだ。これで仕留め切れなけりゃ・・・」 モンシアの呟きを打ち消すかのように・・・煙を裂いて、黒い影が飛び出した。 衝撃。ミョルニルを通した感触に、ため息を吐く。 あの時、大量の爆風に囲まれ、無数の弾丸やミサイルに晒されたヒイロは、 左腕のミョルニルを回転させ、前方からの弾幕を辛うじて防いだのだった。 (もっとも、無傷とはいえないがな・・・) TP装甲で機体へのダメージは防いだものの、その代償として失われたENは大きく・・・ また、コクピットを襲った衝撃によるダメージが、体中に幾分か残っていた。 「・・・名前は知らないが、いい腕のパイロットだった・・・」 自機にここまでのダメージをあたえた相手を思いつつ、レイダーで周囲の黒煙を振り払う。 そこには、無残な姿で転がるガトリングガンの姿があった。 【ヒイロ=ユイ 搭乗機体:レイダーガンダム(機動戦士ガンダムSEED) パイロット状態:疲労、体中に軽い痛み 機体状態:EN残量僅か 現在位置:G-3 第一行動方針:この場から逃走、補給する 第二行動方針:参加者の殺害 最終行動方針:元の世界に戻ってリリーナを殺すため、優勝する(リリーナが参加していることは知らない)】 【ベルナルド・モンシア 搭乗機体:ガンダムヘビーアームズ改(新機動世紀ガンダムW~Endless Waltz~) パイロット状態:疲労 機体状態:右腕ガトリングガン消失、残弾残り僅か 現在位置:G-4 第一行動方針:この場から逃走、補給する 最終行動方針:未定】 【初日 14 30】 BACK NEXT 髑髏と悪魔が踊るとき 投下順 核ミサイルより強い武器 髑髏と悪魔が踊るとき 時系列順 始まりの葬送曲 BACK 登場キャラ NEXT 歌と現実 ヒイロ 迷いの行く先 若い、黒い、脅威 モンシア 戦場の帰趨
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/281.html
疾風、そして白き流星のごとく ◆VvWRRU0SzU 「マサキ・アンドー……サイバスター、お前の主は散ってしまったか」 時刻は6:00.二回目の放送が響き渡る。 ブンドルが駆る空貫く白銀の翼、サイバスター。 その正当たる操者の名が、幼い少女の声にて読み上げられた。彼だけではなく、数時間前に言葉を交わした者も。 「そしてゼクス・マーキス、カズイ・バスカーク……彼らもまた。カミーユ・ビダンは生き残ったか」 一回目の放送で呼ばれたラクス=クライン、リリーナ=ドーリアンの知己。 有力な集団と思われていた彼らが瓦解したことはかなりの痛手だ。 更に放送にはギム・ギンガナムの名も含まれていたが、これにはさほど驚きはしない。 粗暴かつ好戦的な男ではあったが、その戦闘力、そして黒歴史の知識は有用なものだった。 共にいた時間は長くはないがそれでも一度は手を結んだ仲。ブンドルはギンガナムに数秒の黙祷を捧げ、頭を切り替える。 21人。一回目の放送の死者が10人、実に倍以上。 戦いはますます激化している。それこそ、どんな強者、集団とて容易く脱落するほどに。 事ここに至り、もはや一人で動くのは上策ではない。ひとまずはアムロ・レイ、ガロード・ランと合流すべきか。 ギンガナムと戦っていた少女……アイビス・ブレンと言ったか。 彼女は無事のようだが、ギンガナムを下したのもおそらく彼女だろう。 あの激昂を鑑みるに、ギンガナムの仲間と目される自分が一人で出向いては要らぬ戦闘を招くのは必定。 ならばここはひとまず彼女のことは保留し、同志であり技術者でもあるアムロと合流することが先決だ。 アムロ程の腕の持ち主がそう易々と敗北するとは思えないが、いかんせん彼の機体はさほど強力ではない。 そしてこの戦場には先ほどの黒い機体のような危険な敵がいる。 もしそんな機体と出会えば如何にアムロとて……。 ガロードと別れたとき、彼にはアムロと合流するように指示した。 首尾よく合流できたのなら今はガロードの仲間と合流するためにB-1エリアもしくはその付近にいるはずだ。 まずは北へ。思考をまとめ、変形したサイバスター……サイバードが駆ける。 □ 宵闇を光が駆逐しつつある朝の市街地。 本来あるべき人の姿はなく、在るはただ二機のモビルスーツ。 白と黒の巨人は互いが互いを消し去ろうと戦意で己を、世界を満たしていく。 黎明の光に輝く純白の機体、ガンダムF91。 ニュータイプと目される少年を乗せ、クロスボーン・バンガードとの戦いに投入され多大な戦果を挙げた名機。 かたや夜闇と見紛う漆黒の機体、マスターガンダム。 ガンダムファイトという疑似戦争が世界の趨勢を決める未来世紀にて、ガンダムファイターにその人ありと謳われた東方不敗マスタ―アジアが愛機。 対峙する二機は奇しくも同じ「ガンダム」の名を冠している。 「いいねぇ……この緊張感、肌にビリビリ来るぜ。あんた相当の手練らしいな?」 「貴様の目的は何だ? その悪意、ただ命が惜しいから殺し合いに乗った輩ではないだろう」 ビームライフルを向け、警戒を崩さずアムロが問う。 「目的ぃ? そうさなぁ……とりあえずは楽しもうと思ってな? 滅多にない祭りなんだしよぉ」 「祭り……!? 貴様、これは遊びではないんだぞ!」 「俺に取っちゃあどっちでもいいさ。 こいつに乗ってからこっち、棺桶に片足突っ込んでた体がどうも軽くなってな? 暴れ足りねえのさ。 だったら一つ、この祭りを派手に盛り上げてやろうと思って、な!」 言い終わると同時、マスターガンダムが駆け出す。 人体の動きを正確にトレースするシステムはガウルンの体さばきを寸分の狂いなく再現、矢のような踏み込みを成しF91へと迫る。 「速いな……だが!」 だがアムロとて百戦錬磨のパイロット。迫る敵機に焦ることなく牽制のビームを放ち、機体を後退させる。 ―――この機体、先ほどのギンガナムという男の機体に似ている。おそらくは同じ世界のガンダム。 ブンドルが言うには射撃装備はないものの、驚異的な格闘性能を持つ機体、だったか。 あの機体はI-フィールドともサイコフレームの共振とも違うエネルギーを迸らせていた。 直前に交戦していた獅子の機体と同じ、俺の知らない別世界の技術による力。 この『ガンダム』も、奴らと同じかそれ以上の力を持っていると考えるべきだ。油断はできない――― マスターガンダムが体を捻り腕を振り上げる。 まだ拳が届く距離ではない……ガードの空いた胴を狙い撃とうとするアムロ。 だが発射されたのはビームではなく拳。ワイヤーによって伸縮する変幻自在の拳、ディスタントクラッシャー。 あわやというところで頭部のバルカンで軌道を反らす。 「もらったぜぇ!」 迎撃する一瞬の停滞は本体が接近するには充分な空隙。伸ばさずとも拳が届く距離に踏み込まれる。 マスターガンダムが残る右手を振りかぶった。そこにはいつ握ったのか煌々と輝くビームナイフ。 踏み込む勢いのまま、抉り込むように突き出す だが光刃はF91を貫きはしない。アムロは左腕のビームシールドを展開することにより受け止めた。 「ヒュ~、やるねぇ。完全に殺ったと思ったんだがな。大した反応速度だ」 「あいにくそう簡単にくれてやれるほど軽い命ではないのでな」 だが、さすがに同じビームで形成されたとはいえシールド型に薄く展開されたものと一方向に収束させたものでは出力は段違いだ。 シールドが突破される前に勝負を決めようと、頭部バルカン砲、胸部メガマシンキャノンをありったけ撃ち放つ。 至近距離から砲弾の嵐、だが着弾の一瞬前にマスターガンダムが飛び退いた。 「おおっと、危ねえ危ねえ。いいもの持ってるじゃねえか」 言葉の割にガウルンはひどく楽しげだ。対してアムロはさらに警戒を強める。 今の攻防はシールドを突破されたとてF91が失うのは左腕のみ、見返りに敵機のコクピットへ至近弾が叩きこめる罠だった。 だがガウルンはその結果を予期していたか、ビームナイフが止められた瞬間に足を撓め瞬時に後方へ飛び退いた。 これは機体によるところではない。操るガウルン自身の類い稀なる死への直感が成せる業。 「それだけの腕を持ちながら……何故無為な戦いを繰り返す!?」 「おいおい、お説教かい? そういうのは他を当たってくれよ。 傭兵に何故戦うのか、なんて聞くのは野暮ってもんだぜ」 「傭兵……?」 「テロリストでも構わねぇぜ? 何にしろ、俺を説得するなんて甘ぇ考えは捨てるんだな。 せっかく楽しくなってきたってのに興醒めしちまうだろ?」 マスターガンダムが弾き飛ばされた左拳を引き戻す。 幾度か拳を開閉している。損傷はないか確かめているようだ。 この男には信念も大義もない。ただ殺戮を是とする生粋の戦闘者。 放置するのは危険。逃がせば必ず、凄惨な戦いの嵐を巻き起こす。 話し合いによる戦闘の回避など不可能、ならば倒すまで―――アムロは改めてそう決意する。 「名を聞いておこう、黒いガンダムのパイロット。 こちらは地球連邦軍ロンド・ベル隊所属、アムロ・レイ大尉だ」 「地球連邦軍? ロンド・ベル? 知らねえ名だな。ミスリルじゃあねえのかい?」 地球連邦軍を知らない、やはり違う世界の人間。アムロは軽い安堵を覚える。 この野獣のような男が同じ世界出身とは思いたくなかったから。 己が、カミーユやカツのような若い命が、ニュータイプが戦争の道具として利用される世界。 この男がおらずとも火種は抑えきれないほどに溢れている。 「まあそういうノリは嫌いじゃあねえぜ。俺はガウルンとでも呼んでくれ」 だが安堵と同時に、是が非でもこの男は生かしてはおけないと確信する。 優勝し何を望むのかは知らないが、万が一にも自らの世界に介入されないとは限らない。 今ここで、倒す。名を聞いたのは放送で生死をはっきりと確認するためでもある。 「行くぞ、ガウルン……!」 「来いよ、大尉殿。楽しもうぜぇ……!」 そして再び、白と黒がもつれ合う。 ======== F91が引き、マスターガンダムが追う。 乱立するビルの隙間を高速で駆け抜けつつも、先をゆくF91からビームが放たれる。 マスターガンダムは時にビルの陰に隠れ、時にビーム布・マスタークロスで反らしじわじわと接近していく。 既に戦闘を開始してから三十分ほど経った。 アムロは敵手がただの戦闘狂ではないと認識する。 状況はF91が距離を離して射撃、マスターガンダムがいなす。ただそれの繰り返し。 だがアムロは手を抜いてなどいない。本気で狙っているのに当たらないのだ。 接近される度に牽制のビームがマスターガンダムを刺し、その都度また距離が開く。 ガウルンはがむしゃらに近づいてこようとはしなかった。ビルの陰を巧みに用い、決してこちらの射線上に姿を晒そうとはしない。 その動きはモビルスーツの、というより生身の歩兵を思い起こさせる。 戦闘技術だけで言えば、今までアムロが対峙してきたパイロットの中でも間違いなく最上級。 F91の射撃が百を数えようとする頃、さすがにエネルギーが心もとなくなってきた。 ―――十分ガロードからは引き離せた。ここで勝負をかける――― F91を地上へ降ろし、後方のマスターガンダムへと向き直る。 「鬼ごっこは終りかい? そろそろ俺も飽きてきたんだがなぁ」 「同感だ。お前を倒させてもらう……!」 F91が左手にビームサーベルを抜き、右手のビームライフルを乱射する。 対するマスターガンダムも、ヒートアックスを構え走り出す。目前より迫るビームはかすりもしない。 「銃口の向きで……射線を読んでいるだとッ!?」 F91がビームライフルを動かす度、マスターガンダムがその射線からわずかに身を反らすのが見えた。 遠距離ならともかく、この近距離なら銃口の向きは常から銃を扱うガウルンには容易く読み取れる。 ましてガウルンの機体はパイロットの動きに同調するモビルファイター、歩兵の技量は存分に発揮できる。 振り下ろされたヒートアックスをビームサーベルで受ける。 同時に蹴りが飛んできた。迎撃するには間に合わずスラスターを全開にして避けた。 マスターガンダムは追わず、蹴り足を回し機体を回転、勢いを乗せヒートアックスを投擲。開いた距離を弾丸のような速度でヒートアックスが駆け抜けた。 「クッ……!」 「捕まえたぜぇ、アムロさんよぉ!」 F91が再びヒートアックスを切り払ったその刹那、マスターガンダムの伸びた両拳がF91の両足を掴んだ。 「飛んで行きなぁッ!」 そのまま強引にビルへ向けて投げ飛ばす。馬力で劣るF91は紙のように吹き飛んだ。 咄嗟にスラスターを吹かしたものの勢いを殺しきることはできず、轟音とともに外壁に激突するF91。 ハーネス越しでも吸収しきれない凄まじい衝撃にアムロの意識が一瞬飛んだ。 だが歴戦の戦士の本能ゆえか、その腕は意識とは無関係に操縦桿を倒している。 ビルに埋まった体勢からF91が弾かれるように飛び出す。 次の瞬間、F91の胴があった位置へマスターガンダムの黒く輝く指が突き刺さった。 「……、ッ! ガウルンッ!」 同時にアムロの意識が回復し、素早く戦闘へと復帰。 「おいおい、あんた頑丈だねぇ。まさかまだ動けるとは思わなかったぜ」 「貴様を、倒さずに……死ねるものか。まだ、終わっちゃいない……ぞ、ガウルン……!」 アムロの戦意は衰えてはいない。だが、今の衝撃で頭を打ったか、その頭部からは血が流れ出していた。 ―――深い傷じゃない……だが、長く戦闘を行えるほど軽くもない。手当てが必要だ。 もはや猶予はなくなった。次の手で倒し切れなければ俺に後はない。 ……? この感じは―――いや、今はいい。 頼むぞ、F91……『ガンダム』ッ! お前がガンダムであるなら、応えろ……俺の想いに! アムロ・レイ、カミーユ・ビダン、ジュドー・アーシタ。 ガンダムはいつも人の想いとともにあった。そう、サイコミュなどではない。 「ガンダムであること」。そこにこそ意味がある。 力の象徴としてではなく、想いを託され、想いを繋げるマシンとして。 だからこそ、その力のみを信奉する男が操る「ガンダム」を、アムロ・レイは認めない。 「決着を着けるぞ、ガウルンッ!」 アムロの咆哮とともにF91のバイオコンピューターが最大効率で稼働する。 頭部のフェイスカバーが開き、肩の放熱ファンが展開、黄金の粒子を吐き出す。 太陽のごとき黄金の輝きを纏い、F91が跳ぶ。 右手にビームライフル、左手にビームランチャー。腰部のヴェスバーが回転し前に突きでた。 計四つの砲門を構え、マスターガンダムの頭上を取る。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」 眼下のマスターガンダムへ向けて一斉掃射。いくら射線が見えていようと、遮蔽物に隠れようと関係ない。 眼に映る全てを焼き払えばいい。 それはまさに神の雷。反撃も回避も許さない、弾幕と呼ぶのも生温いビームの滝。 残り少ないエネルギー、ここで全て出し尽しても奴を倒す……! そんなアムロの意志を体現するがごとく、F91は破壊の光を撃ち出し続ける。 「く……クク……クハ、ハハハハッ! やるじゃ……ねえか……! こんなカードを切ってくるとは、よ……!」 だが、マスターガンダムは未だ倒れない。 建造物の陰を転々とし、時にマスタークロスで受け、ダークネスフィンガーで払い、致命打を防ぎ続けている。 「このまま……押し切ってみせる!」 「そうは……いくかァァァアアッ!」 ビルの陰から腕だけを伸ばしディスタントクラッシャーを放つ。蛇のようにのたうつそれはしかしアムロがすかさず放ったビームに弾かれる。 だがガウルンは慌てない。今の一瞬で仕込みは済んだ。 「ほうら、こっちだ! 当ててみな!」 ディスタントクラッシャーを引き戻さず、盾の役割を成さなくなったビルから飛び出すマスターガンダム。 その後を追うようにビームが奔る。 ビル群はもはやほとんどが損壊している。遮るものはなく――― 「これで終わりだッ……!」 「ああ、お前さんがな」 遂にF91のビームがマスターガンダムを撃ち抜かんとしたところで―――ビームランチャーが爆発した。 「何……? 新手か!? そんなはずは……ッ」 今、マスターガンダムは何もしていない。明らかに後方から着弾した感触があった。 レーダーも見ずとも感覚でわかる。ここには己とガウルンしかいない。 後方を映すサブモニターに視線を飛ばせば、そこにあったのは黒い『手』。 マスターガンダムには拳を飛ばす機能があった。だがオールレンジ攻撃のように自在に動くものではなく、本体からばねの様に射出されるだけのものだった。 だから一旦打ち出した後はもう威力はないはず――― と、そこでアムロは気付く。先ほど走り出たマスターガンダムは、右手を引き戻さなかった。 ガウルンは拳をこれ見よがしに撃ち、迎撃させて「もう脅威ではない」と認識させたのだ。 弾かれ、地に落ちた拳はだが機能を失っておらず、F91が後ろを向けた瞬間に動いた。 ダークネスショット、並んだ五つの小口径砲門から撃ち出す気弾。 本来想定されていない用途で強引に使われた故か、右拳は沈黙した。 だがガウルンは悔やまない。拳一つを代償に、ビームのスコールを浴びることなく接近できたのだから。 「殺ったぜ、アムロォォォォォッ!」 残る左腕でダークネスフィンガーを仕掛ける。 全力攻撃の最中に奇襲を受けたF91に避ける術はなく、暗黒を纏う指は抵抗なくその胴に吸い込まれた。 「ハハッ、俺の勝ち……!? なぁッ!」 ガウルンの予定では爆散するはずだったF91は、しかしその望み通りの結果を迎えない。 F91の影が解け消える。視界を巡らせたガウルンの眼に映ったのは――― こちらに銃口を向ける、十重二十重ものF91の姿。 「なんだぁ……分身しただと!?」 ガンダムF91の持つ様々な技術。 バイオコンピューター、可変速ビームライフル<ヴェスバー>、ビームシールド。 どれもが最先端と言える技術ではあるがもう一つ、F91には隠された機能が存在する。バイオコンピューターの緊急排熱システム、装甲表面のMEPE。 熱を持った装甲表面の金属を剥離することにより効率よく排熱を行う機構であるが、それは排熱のみならず副次的な効果をもたらす。 すなわち、敵センサーの撹乱。 熱源反応を持つ金属片はセンサーに誤作動を起こさせる。一つの反応が二つ、三つと増える―――言うなればそう、『分身』効果。 質量のある残像。それこそがF91の最大の切り札。 「墜ちろ、ガウルンッ!」 四方八方に現出するF91に、マスターガンダムは防ぐ方向を見定められない。 鳥籠のように―――乱射されるビームは線ではなく面となってマスターガンダムを覆い尽くした。 「がああぁぁあああぁぁああァァァッ!?」 全身を灼く痛み。乗り手と完全に同調するモビルトレースシステムは損傷までも痛みとしてフィードバックする。 灼熱の奔流に打たれ続け身動きが取れず、光に満たされた視界の中でガウルンは死期が来たことを悟った。 ―――俺もヤキが回っちまったな。あんな甘ちゃんに殺られるなんてよ…… どうせなら……そう、カシム。お前になら殺されてやっても良かったんだが。 全く、白けちまったなぁ。こんな腑抜けた最期だとはよ…… F91がビームランチャーを放り捨て、サーベルを抜き放ち向かってくる。 ―――だがアムロさんよ、アンタにも付き合ってもらおうか。俺は寂しがり屋なんでな……! 残る左腕でのダークネスフィンガー。 ビームサーベルを?き消して、この指で串刺しにしてやる―――! 光刃と黒指が激突し―――――― ======== 残ったのは、白。F91が地に降り立ち、膝をつく。 バイオコンピューターのオーバーロード、ジェネレーターの過剰発熱。 力を出し尽くしたF91はしばし、機能停止に陥った。 「……勝った、のか」 激しく息をつくアムロ。戦闘による疲労、頭部からの出血、そしてバイオコンピューターとの同期による消耗。 F91も、そしてアムロももう限界だ。これ以上は戦えない…… 周囲にマスターガンダムの影はない。完全に破壊できたようだ。 最後の瞬間、ガウルンは反撃を仕掛けてきた。ビームサーベルを黒く輝く指で押し返そうと。 その最中、敵機の左腕が爆発。蓄積されたダメージに更なる負荷が上乗せされたのだろう。 アムロが確認できたのはそこまでだ。閃光が収まった後、マスターガンダムの姿はなかった。 「とりあえずはこの傷を処置しなければ、な……。ガロードとの合流はその後だ」 排熱が完了。なんとか、動くことはできそうだ。 立ち上がるF91。歩き出し、放り出したビームランチャーを回収する――― 「―――ッ!?」 F91の腕がビームランチャーを掴む寸前。 砲身が「中心から溶けるように割れ」て、入れ替わりに指が飛び出してきた。 ―――ビームシールド……起動しない!? なら……ッ! 指はF91の左腕に喰らいつく寸前、機体のエネルギーに依存しない頭部バルカン砲を半壊したビームランチャーのジェネレーターに叩きこむ。 爆発、F91は構わず全力で後退。 爆煙が晴れ現れたのは。地面から這い出た、左腕が欠落しているマスターガンダム。 「チッ、勘の良い奴だな。今のはイケたと思ったんだがよ」 「貴様……生きていたか」 「あんたのおかげさ。見てみな、この地下道。あんたが派手に撃ってくれたおかげで剥き出しになったわけよ」 マスターガンダムが這い出てきた大穴。その先には大きな空間があるのか、暗く底も見えない。 ビームサーベルに競り負けたあの一瞬。 ガウルンはメガ粒子がコクピットを灼くより一瞬早くこの空洞に気付き、わざと左腕に過負荷を与え爆発させた。 爆発はアムロに破壊したと誤認させ、また反動でマスターガンダムを口を開けた穴に滑り込ませた。 空洞の中、ガウルンは素早く機体のコンディションを確かめる。 左腕は肩から欠落し、右腕も指の動きがぎこちない。ダークネスフィンガーはかろうじて使えるだろうが、ヒートアックスは握れないだろう。 全身の装甲は焼け爛れ、だがそれでもまだ動けるのは苛烈な格闘戦を本分とするモビルファイターという機種の頑健性ゆえか。 痛みはいよいよ耐え難いものとなってきた。だがガウルンは逃げの一手を打たない。 獲物はまだ上にいる。そう、自らの勝利を確信した、隙だらけの姿で。 機体を停止し耳を澄ませる。近づいてくる巨体の足音、今、真上に――― ダークネスフィンガーで天井を突き破る。狙いはドンピシャだったが、向こうの反応の方が一瞬早かった。 「まあ、結果は変わらんね。どうやらあんたの機体はロクに動かんようだしな」 ガウルンが迫る。 両腕が使えずとも、マスターガンダムの蹴りはモビルスーツを容易く破壊してのける威力がある。 F91は動かない。 やっとのことで歩けるようになったのに、先の爆発でまたシステムがフリーズしてしまった。 モニターに映るマスターガンダムが足を振りかぶる。 「あばよ、大尉殿。楽しかったぜ」 斧のごとき踵が振り下ろされ――――――― □ 疾風が、吹き抜けた。 F91を撃ち砕くはずだったマスターガンダムの踵を、白銀の剣が受け止めている。 レーダーには直前まで反応がなかった。探知範囲外から一瞬で飛び込んできたそのスピード。 「先ほどは名乗っていなかったな、闘争を望む醜き者よ。 我が名はレオナルド・メディチ・ブンドル。美しきを愛する騎士である」 風の魔装機神、サイバスター。風の名に恥じぬこと、まさに疾風。 「……こちらはアムロ・レイ。いいタイミングだ、ブンドル」 「アムロ、君だったか。その機体は……なるほど、腕に見合う美しい機体に巡り合ったか」 アムロの内にそれほど驚きはない。 拡大した知覚領域で数分ほど前にこのエリアに新たな反応が現れたことを知った彼は、その反応が知ったもの……ブンドルであると悟った。 そして万が一ガウルンを仕留め損ったとき彼が介入できるように、派手にビームを撒き散らしてこの位置を伝えたのだ。 サイバスターは満足に動けないF91の前に出る。 「おいおい、良いところだったのによ。あんたはまったく人の邪魔ばかりしてくれるねぇ」 「それは申し訳ないな。だが私としても君の顔を見るのは嬉しいものではないのでね、ここでご退場願おう……!」 焦りのないガウルンにやはり油断ならないと肝に銘じ、疾風が今にも駆けんと―――― 「おおっと、二対一ってなぁフェアじゃねぇなあ。ここは退かせてもらうとするぜ」 する、その前にマスターガンダムは後退する。 追撃しようとするサイバスター、だが一瞬早く飛来した何かがF91を狙う。 軌跡を見極め、弾く。それはビームで形成された短剣だった。 その一瞬の隙を突いてマスターガンダムはF91の砲撃により顔を覗かせた地下通路へと身を躍らせた。 「中々面白かったぜ、アムロさんよ。機会があったらまた闘り合おうじゃねえか。 それにあんたはブンドルって言ったか? 二度も邪魔をしてくれたんだ、あんたはいずれ殺してやるよ。じゃあな」 一瞬の内にマスターガンダムの黒い躯が漆黒の闇へと融ける。 「フン、見事な引き際だな。戦を心得ているか」 「逃がすか……!」 「待て、アムロ! 追うな!」 F91を再起動し追撃しようとするアムロをブンドルが制する。 「この地下部がどれほどの規模かはわからないが、そこでは奴には勝てん。それがわからん君ではないだろう」 狭く暗い空間。F91のビーム兵装は崩落の危険があるために使えず、サイバスターの機動性もほぼ殺される。 対して敵機、闇に同化するマスターガンダムは四肢による格闘戦を本分とし、スラスターではなく脚部を用い移動するため狭隘な空間でも小回りが利く機体。 手負いとはいえ二機がかりでも敗走は必至。地下は今やガウルンの狩り場なのだ。 「……ああ。悔しいが今は奴を仕留められない、ようだ。だが、次こそは……!」 「そうだ、我々はまだ負けたわけではない。次の機会あらば確実に奴を打倒してみせよう。 ……さて、アムロ。情報を交換したい、場所を変えよう。 色々あったようだが、ここでは奴の気が変わって……といったことになるかも知れんからな」 □ マスターガンダムが地下に逃げ去った後、安全と思われる所まで移動した二人は周囲の警戒を切り上げ一息ついた。 「すまない、ブンドル……助かった」 「間に合ったようでなによりだ。それにあの男は私が取り逃がした男でね、礼を言う必要はない。元はと言えば私の不手際だ」 アムロの頭部の傷を処置しつつ、別れた後の経緯をお互いが語り出す。 ギンガナムを仲間に引き入れたことにアムロは驚いたが、その彼ももういない。 「おそらく、ギンガナムと戦っていたその流線型の赤い機体。乗っているのは俺の知り合いだ」 ブンドルの話でアムロの興味を引いたのは、突如転移してきた赤い機体。 覚えがあるのも当然だ。あの男……シャアが命を賭けて守ったであろう少女なのだから。 だが彼女は不安定ではあったが、見ず知らずのブンドルにまで見境なく襲いかかるほど戦いに呑まれてもいなかった。 ならばおそらく原因はギンガナム。どこまでもはた迷惑な男だ、と嘆息する。 「ブンドル、俺は彼女と合流する。俺ならばまだ話は通じるだろう」 「心得た。ではガロード・ランのところには私が行こう。彼女を守ってやってくれ」 「ああ……そうだ、もう一つ。君はカミーユにあったと言っていたな?」 「カミーユ・ビダンか? うむ……今から半日ほど前だ。 同行していた仲間が皆逝ったようだが、あの少年はまだ生き延びているようだな」 少年? カミーユはグリプス戦役時はたしか17歳だったはず。それから4年たっているからもう青年と言える歳であるはずだ。 アムロの時間からすればカミーユはもう少年ではない。とはいえグリプス戦役の後、碌に顔を合わせてはいないのだから確かだとは言えないが――― そこでアムロはアイビスとの会話を思い出す。 彼女は一年戦争もジオン軍も、ネオ・ジオン軍による5thルナの落下も知らなかった。 一年戦争後の生まれならともかく、15は超えているだろう彼女がネオ・ジオン軍を知らないとは考えにくい。 そこからアムロとシャアは、「参加者はパラレルワールドから集められた」という突拍子もない解釈を導き出した。 その解釈からもう一歩、踏み込む。 異世界間の移動ができるほどの技術なら、同世界内での時間遡行も可能ではないか―――と。 そもそも、今アムロが搭乗しているこのガンダムF91。この機体にはアムロの時代より何世代も先の技術が使用されている。 アナハイム社が極秘裏に開発していた、という線もなくはない。 だが、より大型・より高火力のモビルスーツ開発に傾倒していたあの時代にこのような小型機を開発しようとするニーズはないだろう。 アムロの時代より未来から持ってきた……と考える方が自然に納得できる。 ブンドルに今考えた推論を話すアムロ。 彼とて納得し難い様だったが、おそらくはできるのだろう、と返してきた。 ブンドルが元々知る超エネルギー、ビムラー。それにここで新たに検知したゲッター線という未知のエネルギー。 それらを意のままに操れるなら、時間操作とて不可能ではないかもしれない。 「だがアムロ。それがカミーユ・ビダンに何の関係が?」 「俺の時代からカミーユが参加しているならそれほど問題はないが、それ以前……特に戦時中のカミーユだと少々まずいことになる。 先の放送で―――その、シャア・アズナブルという名が呼ばれただろう?」 「シャア・アズナブル……君の宿敵だったか。それで?」 「シャアはその頃のカミーユの上官……いや、ある意味での導き手だった。」 シャアの名を口に出すと同時、アムロの胸に僅かな痛みがよぎる。 この手で決着を着けることが叶わなくなったから……それだけだろうか? 「カミーユは俺とは比べ物にならないほど研ぎ澄まされた感性を持っていた。 あの頃のナイーブな彼が呼ばれたのだとすれば……」 「シャア・アズナブルの死に必要以上に動揺する?」 「そうだ。いや、動揺では済まないかも知れない。彼はあの男に地球圏を導くという役割を求めていた。 それほど奴の存在は彼の……いや、俺達の中では大きいものだった」 アムロの様子には気付いたろうが、ブンドルは何も言わなかった。 それを有難いと思うアムロは、やはり己もシャアの死を未だ受け止めきれていないのだ……と自嘲する。 「とにかく、カミーユに会ったら俺の名前を出してくれ。信用されているかはわからないが、少なくとも敵対されることはないはずだ」 「心得た。……私としても、彼には個人的に興味が出てきたよ」 後半の言葉はアムロには聞こえなかったようだ。 そしてひとしきり情報を交換し、行き先を決める。 アムロの機体に関する懸念も解消された。これなら分散しても大事はないだろう。 「ではアムロ。彼女と合流できたら次の放送までにG-6の基地で落ち合おう」 「了解だ。死ぬなよ、ブンドル」 「そちらもな」 白き流星が飛び立つ。その軌跡を眺め、ブンドルは思う。 この機体、サイバスター。本来の操者が散った今、この機体自身が新たな操者を選ぶことはあるかも知れない。 だがきっと、それは自分ではない―――と。 マサキが逝った具体的な時間はわからないが、ゲーム開始当初には感じなかった違和感がこの数時間幾度かブンドルを襲っていた。 ブンドルはそれをサイバスターの意志とみている。己が操者にふさわしいか品定めをしていたのだろう。 そして結果は、『否』。意志は感じられども新たな力が引き出されるようなことはない。 アムロの機体がニュータイプとやらを擁せねば力を出し切ることができないように、サイバスターもブンドルでは駄目なのだ。おそらくはアムロでも。 サイバスターが求めているのは理屈や論理に優れた大人ではない……もっと若い心、善悪の価値観や感情からではなく、言うなれば「魂」で倒すべき敵を見定められる者。 非力な機体でサイバスターに立ち向かおうとしたマサキ・アンドーのように、大きな危機に際し打算や私怨に囚われず戦える者……そんな気がする。 「もし……そんな者が私の前に現れ、我らと志を同じくするならば……」 そのときは託そう、このサイバスターを。 強力というだけではない、ラプラスコンピューターというゲーム打破の「鍵」となり得る力を持つこの機体を。 それがあの邪悪な主催者を討つ一歩となるなら。 今話に出たカミーユ・ビダン。彼なら一見条件を満たしているように思えなくもないが。 「いや……まだ結論を出す時ではないな。未だ見ぬ誰かであるやも知れぬ」 ビームナイフを回収し、サイバスターが飛ぶ。行き先は北西、ガロード・ランのいる場所。 「願わくば……その誰かは、美しき者であってほしいものだ」 【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91) パイロット状況:F91によるニュータイプ能力の意識拡大 疲労 頭部から出血(処置済み) 機体状態:EN10% ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ ビームシールド一時機能停止 頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾80% 現在位置:D-8 第一行動方針:どこかで補給を行い、アイビスと合流する 第二行動方針:基地に向かい首輪の解析 第三行動方針:基地にてブンドルと合流 第四行動方針:協力者の探索(カミーユ優先) 第五行動方針:首輪解除のための施設、道具の発見 最終行動方針:ゲームからの脱出 備考:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している シャアの死亡を悟っています ガウルンを危険人物として認識 首輪(エイジ)を一個所持】 【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL) パイロット状態:主催者に対する怒り、疲労(主に精神面) 機体状態:サイバスター状態、各部に損傷、左拳損壊 ビームナイフ所持 現在位置:D-8 第一行動方針:ガロード達の集団に接触する 第二行動方針:三四人の小集団を形成させる 第三行動方針:次の放送までに基地へ向かう 第四行動方針:サイバスターが認め、かつ主催者に抗う者にサイバスターを譲り渡す 第五行動方針:閉鎖空間の綻びを破壊 最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ 備考:ハイ・ファミリア、精霊憑依使用不可能 空間の綻びを認識 ガウルンを危険人物として認識 操者候補の一人としてカミーユに興味】 □ 「さて……どうしたもんかね、こいつは」 目前であがく「少年」を見下ろし呟くガウルン。 その少年の名は紫雲統夜。今は自らの衣服によって自由を奪われている。 「畜生! 解け、解けよっ! 何なんだよあんたは!」 空を埋め尽くすミサイルから辛くも逃れた彼は、偶然落ちた地下空間に潜伏しようと決め、交戦座標から幾分離れたところで休憩を取っていた。 疲労がたまっていたためすぐに眠りに落ち、起きたら目の前にはヤバそうな男、自身は縛られていた。 「あんたも俺を殺そうってのか!? くそっ、ふざけるな、俺は死なない! 死にたくないんだッ!」 アムロとブンドルからまんまと逃げおおせたガウルンが気づいた違和感。 先ほど撤退するとき、ごく自然に「右手で」ビームナイフを投擲した。 右拳は沈黙したはずなのに――― だがガウルンはまあいい、と気に留めない。この機体がヤバいのは薄々わかっていたことだ。 戦えるのなら万々歳だ。癌の痛みも消してくれてありがたいことこの上ない。 それでもさすがに休息が必要と感じ、地下通路を彷徨っているうちに見つけたのがこの少年だった。 マスターガンダムの三倍はあろうかという巨大な機体。 だがここまで接近しても構えないどころか反応すらしない。 まさかと思い機体から降りて接近し、案の定動きのない巨体によじ登り―――――― こうしてヴァイサーガのコクピットから引きずり出された統夜は、上着を引き裂かれて作った縄で縛られているというわけだ。 鬼気迫る顔で喚く統夜に、殺して機体を奪おうかと思案していたガウルンの胸中にふと興味が生まれる。 ―――こいつは面白い。こう容易く無力化されるということは訓練された兵士ではないのだろうが、言動や表情から察するに「乗って」はいるようだ。 そしてこの時間まで生き残っている。群れる仲間もなく、なら逃げ回っていたかと言えば機体の損傷具合からそれもない。 つまりは機動兵器操縦の資質があるということだ。もちろん、資質だけでなく機体性能もあるのだろうが。 今は死の恐怖に呑み込まれ己を見失っているようだが、「そこ」を過ぎれば化ける。 そう、あのカシムのように死をすぐ隣にあるものとし、命というものに無感動になれば。 今はまだ蕾。だがそれが花を咲かせれば……きっと、「楽しめる」。 決まりだ。こいつは叩けば叩くほど鋭くなる。そしてこのゲームはそのための餌には事欠かない――― 「落ち着けよ坊主。何も取って喰いやしねえよ。お前、このゲームに乗ってるんだろう?」 ようやく声を出したガウルン、少年は油断なく……というより恐怖に強張った目で睨みつけてくる。 「俺もそのクチさ。だがさすがに歳なもんで、一人じゃ辛いと思ってたところでな……」 両手を上げ敵意がないことを示す。その後もいくつか言葉を重ね、自身も手頃な段差へと腰を下ろす。 殺すつもりがないとわかったのか、少年が脱力した。 些か情けないと思ったガウルンだが、まあこれからだと思い直し、告げる。 「そこでだ、坊主。俺と手を組まないか?」 ……目を丸くした少年の顔は、正直なところ傑作だった。 【紫雲統夜 登場機体 ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A) パイロット状態 疲労大、苛立ち、マーダー化 拘束 機体状態 左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN1/4、烈火刃残弾ゼロ 現在位置 C-8地下通路 第一行動方針 なんなんだこいつ……!? 最終行動方針 優勝と生還】 【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム) パイロット状況:激しい疲労、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染 機体状況:全身に弾痕多数、頭部・胸部装甲破損、左腕消失、マント消失 DG細胞感染、損傷自動修復中、ヒートアックスを装備 右拳部損傷大、全身の装甲に深刻なダメージ EN20% 現在位置:C-8 地下通路 第一行動方針:統夜に興味。育てばいずれは……? 第二行動方針:アキト、テニア、ブンドルを殺す 第三行動方針:皆殺し 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す 備考:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 】 【二日目7:35】 BACK NEXT leaving me blue 投下順 二つの依頼 計算と感情の間で 時系列順 古よりの監査者 BACK NEXT 戦いの矢 アムロ 黄金の精神 ヘヴンズゲート ブンドル 判り合える心も 判り合えない心も 戦いの矢 ガウルン 選択のない選択肢 SIDE:B 命の残り火 統夜 選択のない選択肢 SIDE:A
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/344.html
Stand by Me ◆YYVYMNVZTk 確実に切り裂くはずだった。 何も考えず、無心に、ただ刃を走らせて、その一撃は何よりも疾く、重く、強く。 けれど、確かに決意したはずなのに、あの声を聞いた途端に俺の心は揺れてしまった。 何故、どうしてと、疑問符が頭の上をくるくる回る。 「テニ、ア……」 ナデシコに近づいていく姿を遠めに見ていたときには気付かなかったが、テニアの乗る機体の損傷は、決して軽いものではなかった。 左腕は消失し、脇腹も痛々しく抉れている。それ以外にもはっと目に付く大きな傷から微細な傷まで全身無事なところがないほどだった。 テニアもまた、幾度となく戦ってきたんだろう。そして生き残ってきたんだ。 ……どうやって、生き残ってきたのか。ガウルンからは聞いている。 だけど、俺はまだテニアからは何も聞いていない。 そう、テニアから聞いた言葉は、まだ一つだけ。 あの言葉が真なのか偽なのか俺には判断できない。 だからもっと、テニアの声が聞きたいと思ってしまったのだ。 ただ今、この瞬間だけは、自分が殺し合いに巻き込まれていて、自分もまた殺し合いに乗るつもりで、最後の一人になろうとしていたことを忘れていた。 ただの高校生だった自分を担ぎ上げてロボットアニメの主人公に仕立て上げてしまった三人の、最後の生き残りである赤毛の少女を自らの手で殺そうとしていたことさえも忘れてしまった。 突然殺し合いの場に放り出されてしまって、磨り減った神経を更に張り詰めさせて、その末にようやく出会えた知り合いと思わず寄り添いたくなるのだってなんら不思議なことじゃないと思いたい。 そうなんだよ。 俺はもう、疲れてるんだ。 本当は、大きな声を上げて泣いてしまいたいんだ。 誰かの胸の中で、子供みたいに甘えたいんだよ。 今まで散々毒づいていたのは誰だって、笑うか? 笑われたっていい。簡単に心変わりしてしまってるってのは誰よりも俺が分かってる。 あの時テニアに対して抱いた殺意が本物じゃなかったわけじゃない。 ただそれ以上に、俺が思っていた以上に、俺の心は弱かったんだ、限界だったんだ、ただそれだけの話なんだ。 「統夜だよね? 統夜なんだよね!?」 ようやく二言目が聞けて、涙が一粒落ちそうになった。 でも、そんな顔をテニアには見せたくないと思ってしまったのはきっと男の子の意地というやつなんだろう。 少しだけ顔を伏せて、鼻頭がツンと熱くなる感覚をやり過ごしてから顔を上げ、今の自分が持つなけなしの余裕で表情だけでも取り繕って、声を返した。 「ああ、統夜だよ……テニア」 「良かった……会えて、本当に良かった……!」 モニターに映ったテニアの顔は、何処か懐かしかった。 赤毛と、くりくりとした瞳。おてんばだったテニアには似合わない、とても疲れた顔をしている。 最後に会ってから二日と経っていないはずなのに、数年も会ってなかった様な気さえしてしまう。 どうしようもなく、どうしようもなく、目の前にいる女の子はフェステニア=ミューズだった。 カティア=グリニャールでも、メルア=メルナ=メイナでもなく、フェステニア=ミューズだった。 ただ一人だけ生き残ってしまった女の子がそこにいた。 「どうしたの、統夜?」 「いや、ただ――」 少しだけ、思い出していたんだ。 テニアたちと出会ってから今までのことを。 「何で今更、そんな昔のこと?」 思い出さなきゃ、きっと俺は前に進めないから。 格好悪いだろ? 「ううん、そんなことない。アタシ信じてたからさ。統夜が助けに来てくれるって。 そして統夜は――来てくれた。アタシを助けに、来てくれた!」 そう言ってテニアは、俺に向かって笑ってくれたんだ。 そしてようやく俺は、思い出せた。 なんで、いきなりロボットに乗り込めだなんて言われて、そのまま戦い続けてたのか。 いや、戦うことが出来たのか。 最初は自分のためだった。死にたくないから成り行きに任せて戦い続けてたんだ。 でも何時の間にか、理由はそれだけじゃなくなっていた。 こいつらだったんだ。カティアと、テニアと、メルア――三人がいたから、三人のために、俺は戦おうと思い始めてたんだ。 それが、俺が偽者の主人公を続けられていた理由だったんだよ! くそっ……! くそっ!! 思い出したんだよ。忘れてたものを思い出したんだよ。 忘れたほうが絶対に楽だった。何も考えずに殺せるようになってれば、俺はきっと全てを捨ててでも、自分の命を守りにいけたんだ。 でももう駄目なんだ。 俺はテニアの声をもっと聞きたいと思ってしまってる。 テニアなら――俺に、主人公を続けさせてくれるんじゃないかって甘い希望を抱いてしまってる。 この場に及んで、俺は守りたいものを増やしてしまったんだ。 どんなに頑張ったって、一つしか残せないような、こんな場所でさ。 「テニア。お前が俺のこと信じてくれたんならさ――俺に、俺自身を信じさせること、出来るか?」 「いいよ。アタシは統夜のことを信じてるって言ったじゃん。 だから、統夜がアタシのことを信じてくれたなら――きっとそれは、アタシの中にある統夜のことを、統夜が信じることになる」 「俺はお前を信じたい。だからもっと聞きたいんだ。……俺が、俺でいられるように」 だから俺が俺を信じられるようになるまで、テニアを信じられるようになるまで――二人だけの時間が、欲しかった。 通信機のスイッチを入れる。チャンネルは既に合わせてある。告げるのは別離の言葉だ。 「……ガウルン」 『――ハ! お前が嬢ちゃんと向き合ってるってだけで、お前が何を言いたいのかくらい分かってるさ。 俺はお前のこと、なかなか見所のある奴だと思っていたが……とんだ見込み違いだったみたいだな?』 「幾ら罵ってくれても構わない。ただ俺は、あんたよりも信じたい相手が出来たんだ」 『あーあ、あれだけ忠告してやったのに――結局お前は、嬢ちゃんに丸め込まれちまったってわけかい』 「何と思ってくれてもいい。ただ――出来の悪かった弟子から師匠へ、最後に一つだけお願いさせてくれよ。 俺たちは二人だけになりたい。……今、笑っただろ?」 『そりゃあ笑うさ。ククク……この期に及んで色恋沙汰とは、若いねぇ?』 「茶化すなよ。あんたにとっちゃ笑い話でも、俺にしてみれば大事なことなんだ。頼む、少しだけでいい。俺たちが逃げ出せるまで時間を稼いでくれ」 『嫌だね。なんで俺がお前のためにそこまでしてやらなきゃいけないんだ? それで交渉のつもりなら、お粗末としか言いようがないな』 「……そうだよな。今更あんたに頼みごとなんて、俺がどうかしてたみたいだ」 『だがなぁ……元々、あの戦艦を狙うつもりだったんだよ、この俺は。お前に指図されたわけじゃないが――結果的には、同じことになるかもしれないな』 「はは、なんだあんた……案外、良い奴なのか?」 ブツンと通信は途切れた。 さんざ迷惑をかけられたが、終わってしまった今ならば、悪くなかったといえたのかもしれない。 いや、やっぱりそんなことはないか。 何はともあれ、これで準備は整ったはずだ。見ればナデシコから機体が一つ飛び出そうとしている。 これ以上、無駄な時間はなかった。 ブツンと通信は途切れた。 さんざ迷惑をかけられたが、終わってしまった今ならば、悪くなかったといえたのかもしれない。 いや、やっぱりそんなことはないか。 何はともあれ、これで準備は整ったはずだ。見ればナデシコから機体が一つ飛び出そうとしている。 これ以上、無駄な時間はなかった。 「テニア」 「うん」 たった五文字で通じてしまう。俺たちの距離は、こんなに近かったっけ? いや、今は余計なこと、考えなくてもいいんだ。 視界の隅に、黒が現れた。ガウルンの乗るガンダムだ。放たれた光弾が、ナデシコから飛び出そうとした機体の注意を引く。 その一瞬の隙をつき、俺たちは走り出した。 何処へ向かうかなんて考えてなかった。ただ、少しでも早く二人だけになりたかった。 ◇ 久しぶりに、統夜と会った気がする。 実際のところ、どのくらい会ってなかったんだろう。 うーん……一日くらいしか経ってないんだけどなぁ。 でもさ。 やっぱり統夜は、統夜だった。 アタシを助けてくれるヒーローだった。 そして二人で逃げ出した。 今ここは、どのあたりなのかな。 統夜に連れられて、とにかく逃げて――こんな感覚は久しぶりだった。 周りに誰もいないような、見渡す限りの草っぱらまで辿りついて、ようやく統夜は止まった。 そして――二人きりになったと、ようやく感じる。 うん。ようやく。 本当の意味で、私たちは二人きりになってしまった。 カティアも、メルアも、ついでにあのグ=ランドンも。 皆死んでしまったから、残ったのはアタシと統夜だけになった。 もし今、生き残っている人たちが皆生きて帰れるハッピーな展開があったとしても、アタシと統夜にとってそれはハッピーエンドなんかんじゃない。 統夜はカティアが死んだことを悲しんで、ずっと生きていかなくちゃいけないんだろう。 アタシはそんな統夜を見て、死ぬまで独りぼっちかもしれない。 たった一日で、アタシたちは変わってしまった。変わらざるを得なかったんだと思う。 変わらないと、耐えられなかった。 メルアが死んだことも――カティアを殺したことも――きっと昔のままのアタシだったら、耐えきれなかっただろうな。 昔、だなんて変だね。 でも、もうあの時間は――統夜と、アタシたち三人が仲良く過ごせていたあの頃は――もう、大昔のことだったんじゃないかと、そう思っちゃう。 「……テニア」 統夜は一体何を考えてるんだろう。 アタシには、今の統夜が分からなかった。 なんだか今の統夜は、アタシが知っている統夜じゃないけど、でも確かに統夜なんだっていう変な感覚。 この違和感が何から来るものなのか、アタシは知りたかった。 統夜のことをもっと知りたいから――なんて、おセンチな理由じゃないよ。 ただ単に、統夜がアタシを守る騎士として、ちゃんと頑張ってくれるのかどうか、それだけは知っておかなくちゃいけなかったから。 「俺、ちゃんとテニアと話したいんだ……聞きたいことも、たくさんあるんだ」 「いいよ。じゃあ……何から話す?」 「その前に、機体から降りないか? ちゃんと向かい合って話したいからさ」 そう言って統夜は、自分から先に降りて、草原に立った。 こんなことが出来るのは、きっとアタシのこと信用してくれてるからなんだろう。 もしここでアタシがベルゲルミルの足をちょっと動かせば、たちまち統夜は潰れて死ぬ。 そんなこと想像もしてないからこんなことが出来るんだと思う。 そしてアタシは……統夜がアタシを殺そうとするなんて思わなかったから、ベルゲルミルから降りた。 「ん。……統夜、何だか印象、変わったんじゃない?」 「そうかな? ……まぁ、色々あったから。そういうテニアも……いや、あんまり変わってないように見えるな」 力無く笑う統夜は、アタシが期待してた統夜じゃなかった。 なのにさ……ずるいよね。この統夜は、アタシが……いや、アタシたちが好きだった統夜にそっくりなんだよ? それじゃあさ、この統夜がどんなに頼りなくっても、期待しちゃうじゃん。 会ったらアタシが利用してやるー! なんて考えてたけど、アタシじゃなくて、統夜がなんとかしてくれるんじゃないかって思っちゃうよ。 だって統夜なんだもん。 統夜なら、アタシが出来っこないことでもやってくれるって、そんな気がするから。 ……アハハ、なんだか柄じゃないよね、こういうの。 「それで話したいことって何?」 「聞きたいことがある。テニアが今まで、どうやって生き延びてきたのか」 アタシは喋ったよ。 基本はナデシコで喋ったことと同じ。 メルアとカティアが殺されて、命からがらJアークから逃げ出してナデシコに転がり込んで、ようやく安心したと思ったら勘違いでナデシコ組に殺されそうになった。 そんなことを感情を込めながら、昔のアタシならこう話しただろうなって話し方で統夜に伝えた。 「だから……あの時統夜に助けてもらえて、本当に嬉しかった。またこうして統夜と話せるなんて夢なんじゃないかっておもっちゃうくらい」 「俺もだよ。俺も……ずっとテニアに会いたかった」 「え?」 「あ……いやいや、そんな意味じゃなくってさ……その、何て言うか」 顔を真っ赤にして照れる統夜が無性に可愛くて、久しぶりに声を上げて笑った。 あははははははと、大きな声で笑ったら、なんだか心がすっきりとした。 「あはは……そんな慌てなくてもいいのにさ。それで? それで統夜は今までどうしてたの? 統夜のことだから、またどこかで女の子でも助けてたりしたんじゃない?」 何の気なしに言った言葉だったのに、それで統夜は顔を曇らせてしまった。 ――何でだろ? 統夜に感じた違和感が何だったのか、アタシはよく考えてなかったのかもしれない。 「俺はさ……最後の一人になろうとしてたよ」 統夜の口からそんな言葉が出てくるなんて思いもしてなかった。 多分この時のアタシは、とても間抜けな顔をしてたと思う。 だってそうでしょ? 統夜が殺し合いに乗るだなんて……考えられない。 なのに統夜はまだまだ喋っていく。 「最初は生き残りたかっただけだったんだ。何度か戦って……でも、誰も殺すことはなかった。 でも、やってしまったんだ」 何を、とははっきり口にしなかった。 だけど何のことなのか、アタシには良く分かる。 段々と、血の気が引いていくのを感じていた。 「その後は半ば自棄だった。また戦って、戦って……その後だったよ。俺がガウルンと手を組んだのは」 完全に血の気が引いた。 アウト。どう考えてもこれはアウト過ぎる。 ガウルン――唯一、殺し合いへの意思をはっきりと見せた相手。 ガウルンからアタシがやったことをばらされてたら、完全にアウト。 「聞いたよ。テニアが何をやったのか」 はい死んだ! アタシ今死んだよ!? ……なのに統夜は、何故か優しげな笑みを浮かべていた。 「聞いた時は、テニアのことを凄く恨んだ。お前ら三人があの日、俺の前に来なかったら……きっと俺は、こんな殺し合いにも巻き込まれずにすんだんだろうって。 そう思ってたから、テニアがやったことを聞いて、なんて自分勝手な奴なんだって起こったんだよ。 でもやっぱり、実際にテニアと会ってしまったら……テニアの声をもっと聞きたいなんて思ってしまったんだ。 さっき、出会った頃のこと、思いだしてるって言ったのはさ、俺が自分から戦おうって思ったのは……お前らを守ろうって、そう思い始めたからなんだって思い出したんだよ。 こうやって話して分かったんだ。少なくとも俺は、テニアを殺すことが出来ない。 覚悟を決めたつもりだったのに、やっぱり大事な人は殺せない。――俺が言いたいのは、それだけだ。 テニアに、ガウルンから聞いたことは本当だったのか聞くつもりだったんだけどさ……やっぱりそれも、どうでも良くなってしまった」 ……それってさ、ずるいよ。 自分だけ言いたいこと全部言っちゃって……ずるいよ。 そんなこと言われたら……アタシだって、統夜のこと、思いだしちゃうじゃない! アタシの中で統夜は英雄だった。誰よりも強い存在だった。 カティアと結ばれたときだって、それが統夜の選択ならって、そうやって身を引いた。 ……それに、大事な人は殺せないって、だから統夜は優しいんだよ。 そんなことを言われちゃったら……アタシは、何も言い返せない! 本当は殺したくなかったなんて、そんな言い訳もできない。 アタシはカティアが目を覚ましたその時に、怖くなって力を込めて……殺したんだよ! カティアだけじゃないメルアだって目の前で殺されたのに、アタシは何も出来なかった。見殺しにしたんだ。 そんなアタシがさ、優しい統夜の隣にいられるわけないじゃん。 ただ優しいってだけなら、比瑪だっていたけど、でも、統夜と比瑪じゃ全然意味が違う。 だって……だってアタシも、こうやって話してて、統夜のことが殺せるだなんて思わないんだもの! ……あーあ、駄目だ。やっぱりアタシは――どうしようもなく統夜のことが好きなんだ。 好き。大好き。愛してる。いくら言葉があっても足りないくらいの気持ちがアタシの中にある。 メルアを見殺しにしたアタシでも、カティアを殺したアタシでも、武蔵を撃ったアタシでも、オルバを置き去りにしたアタシでもない。 ただの恋する少女なフェステニア=ミューズになってしまうんだ、統夜の前では。 「あのさ……」 口が勝手に動いていた。 アタシがやってきたことを、全部話してしまう。 どうせなら、カティアを殺したときに狂ってしまえば良かったんだ。 半ば理性を持って、狂ったつもりになって。そしてそのことを統夜に気付かされてしまって。 統夜は「それでもいい」だなんて優しい言葉を吐く。 だからずるい。そんなことを言われたら期待してしまう。 今度こそ、アタシが選ばれるんじゃないかって。 大粒の涙がぼろぼろとこぼれていく。 いつの間にか統夜も泣いていた。 子供みたいに、二人でわんわん泣いた。 「ねぇ、統夜……アタシもさ、統夜と一緒に生きたい。生き延びたい。もっと二人で色んなことしたい」 「俺も、まだまだやりたいことがあって、その隣に誰かにいて欲しい」 「いいの? アタシで。アタシは、最悪な女だよ。酷いんだよ」 「いいさ。俺だって最悪だよ。でも――テニアが欲しいんだ」 「ねぇ統夜、もっと強く抱きしめてよ。何もかも忘れちゃうくらいに、強く……」 初めて触れる統夜の胸の中で、アタシは多分、世界で一番幸せで可哀想な少女になった。 こんな巡り合わせを神様が決めてるんだとしたら、きっとその神様は残酷だ。 なんでこんなところで、って思う。アタシがあんなことをした後にこんな幸せを与えるなんて。 でもアタシは神様に言いたい。ありがとうって。 もう一度言うよ。アタシは今、幸せ。 【紫雲統夜 登場機体 ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A) パイロット状態:昂揚 機体状態 左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN80% 現在位置:H-1 第一行動方針:??? 最終行動方針:テニアと生き残る】 【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル) パイロット状況:幸福 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) 、シックス・スレイヴ損失(修復中、2,3個は直ってるかも) EN60%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている 現在位置:H-1 第一行動方針:??? 最終行動方針:統夜と生き残る 備考1:首輪を所持しています】 【二日目14 30】 BACK NEXT 心の天秤 投下順 驕りと、憎しみと 驕りと、憎しみと 時系列順 かくして漢は叫び、咆哮す BACK NEXT Lonely Soldier Boys &girls テニア 王の下に駒は集まる Lonely Soldier Boys &girls 統夜 王の下に駒は集まる
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/258.html
◇ 滑走路を駆け抜けた大雷凰。その左腕が伸びる。 瓦解した建物に頭を埋めるようにして、突き立つトマホーク。その柄を掴んだ。 同時に足場を踏みしめ付いた勢いを削ぐ。 視線は追いすがる大型機に。踏み抜いたアスファルトの破片が舞い上がり、巻き込まれた建物の破片が舞い踊る。 二本の爪跡を残し、ようやく足場をしっかりと捉え構えた。 瞬間、両足に体重が乗る。全身のバネが縮み、力を蓄え、そして放出されるその一瞬。悪寒が竜馬の全身を圧し包んだ。 兆候は何もない。 赤い大型機はまだ遠く。基地にも異変は見当たらない。だがそれでも竜馬の直感は危険を察知した。 咄嗟の回避。前に進むはずだった力を横へ。 強引な行動に体勢は崩れ、半ば転がるようになりながらも跳び退く。 しかし、それは正しかった。 数瞬前までいた場所。もし前進していたならば、そこにいたであろう所。それらをまとめて呑み込む極太の粒子の束が駆け抜けた。 膨大な熱量に溶けたアスファルトが融解し泡立つ。地上から天空へ光の帯が奔る。 その光景が過ぎ去ったとき、眼前に大きく空いた穴から新たな機体が現れた。 「メディウスの慣らしに付き合ってもらおうか」 「チッ! もう一機いやがったか」 息を呑み汗が頬を伝って流れ落ちていく。 50m級の大型機。損傷はどこにもなく戦力は未知数。一度退くべきか、そう考える暇は竜馬には与えられていなかった。 メディウス・ロクスが動く。演舞でも行なうが如く舞、その手足からくの字型の金属が打ち出された。 それが距離を取っていた竜馬を襲う。 弧を描くような軌道。かわしても戻ってくる。それを見極めトマホークで薙ぎ払う。 その間に距離が潰れる。既に手を伸ばせば触れられる距離。不意に激情が竜馬を支配した。 大雷凰の出力が跳ね上がる。 「なめんじゃねええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!」 ゲッタートマホークを振り下ろす。同時に突き上げられる拳。 金属同士が重音を奏でメディウスの右腕に生えた一対の牙と大斧が接触した。 「チィッ!!」 押し合う牙と大斧。 不意にメディウスが動く。 力を緩めて大斧を受け流すと左腕を振るう。そこにもまた一対の牙。 右腕のない大雷凰にこれを防ぐ術は無い。火花が散り、装甲板が一枚持っていかれる。 だが構うことなく懐に踏み込んだ竜馬はトマホークを手放し、肩で下から突き上げた。 当て身。 メディウスがふわりと浮かび上がり、次の瞬間痛烈な蹴りが叩き込まれる。メディウスの巨体が弾け飛ぶ。 追撃。背部と脚部のスラスター唸りを挙げ眩い閃光を放った。 一度開いた距離が瞬く間に潰れていく。その先に光が灯る。 「なるほどいい腕だ。だが……」 メディウス・ロクスの胸部に集約されていく光。それが強大な奔流となり撃ち出される。 眼前に迫り狂う粒子の荒波。 だが、構う事は無い。スラスターから漏れる光が大雷凰を呑み込み、一筋の閃光と化して不死鳥を形作る。 ぶつかり合った大雷凰とターミナスブレイザーがほんの一瞬だけせめぎ合い、不死鳥が突き抜けた。 「馬鹿なッ!? グオッ!!!!」 蹴り。ただの蹴り。呆れ返るほど真っ直ぐで前に突き進むほか一切を知らない蹴り。 しかし、大雷凰の全推進力を懸けた蹴りだ。メディウス・ロクスの装甲に亀裂が奔り―― 「うをおおおぉぉぉぉぉおおおおおおりゃッ!!!!」 トンでもない速度で弾け飛んだ。そして、稼動効率100%を超えた大雷凰が、それよりも遥かに素早く回り込む。 が、それで終わるほど敵も甘くは無い。 「出力上昇110……120……頭に乗るな……イグニション」 弾け飛ばされていくメディウス・ロクスから赤黒いオーラが立ち昇る。 そして、瞬時に体勢を立て直し、迫り狂う不死鳥を迎え撃った。 ◇ ベガはその光景をただ見ていた。 赤黒い閃光と蒼白い不死鳥が死闘を演じるその光景をだ。 馳せ違う。 入れ替わる両者。 しかし、動きは止めずに共に空へ。 飛び交い。 幾度と無く交わり。 大気が震える。 眩い火花が散る。 時空が揺れる。 「何なのよ、これは」 割って入る余地など何処にも存在しない。 ローズセラヴィーと目の前の二機とでは、余りにも移動速度が違い過ぎた。 摩擦熱で機体が瓦解を始めるほどのスピード。 何も出来ない。苛立ちが拳を固くする。 突然、縺れる様に飛び交っていた両者が天と地に別れた。 遥かな高みに舞い上がる大雷凰。 地に足をつけ見上げるメディウス・ロクス。 大雷凰を取巻く光が色を変え、形を変え燃え盛る炎のような翼を成した。 刹那、大雷凰が一筋の雷の如く天からの突撃を開始する。 同時に地で迎え撃つメディウス・ロクスが赤黒いオーラを胸部に集約してゆく。 そして、その炎はいつしか色を失し漆黒の闇へと変貌すると巨大な引力を生じさせた。 「うをおおおぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!」 「堕ちろ! 地獄の業火の中へ!!」 天から衝き抜ける超速と引き寄せる強大な引力。疾い。音よりも、雷よりも、光よりもだ。 両者は激突し、渦を巻く巨大な火柱が天を焦がした。 ◇ 炎の渦の中、メディウス・ロクスの右腕が大雷凰を貫いていた。 その中でユーゼスは一人息をつく。際どかった。 予想外の抵抗。メディウス・ロクスの損傷も大きい。 だが、成功した。取り込んだ。 AI1が伝えてきた推測データ。それはこのパイロットとゲッター線の親和性だ。 理屈理論は分からない。 ユーゼスとAI1をもってしても全く理解の届かないところにこのエネルギーは位置している。 しかし、実測データを解析し、AI1がこのパイロットを必要と判断したのだ。 そして、それは正しかった。 笑いが込み上げてくる。 AI1がゲッター線を除く全ての解析が終了したことを告げ、モニターに解析結果が映し出されていった。 炉心のエネルギー値が天井知らずに上昇を続けている。活性化したラズナニウムが大雷凰を取り込み始めている。 後はこの進化の方向性を操るだけだ。思いのままに。望むがままに。 予めAI1に溜め込まれていたデータ――ラズナニウム、TEエンジン、ツェントル・プロジェクトの各機体、MODEL-X。 この世界で溜め込まれたデータ――Gストーン、オーラ力、NT、ゲッター線、DG細胞、アインスト細胞。 そして、ユーゼス自らが入力したデータ――念動力、ズフィルードクリスタル。 それらのデータを解き放つ。 「データ、オーバーロード。さぁ、目覚めよAI1! 主たるこの私が命ずる」 ◇ 数多くの情報が溜め込まれた場所。渥濁とした情報の澱に光が射し、声が響いた。 目覚めよ、と我に呼ばわる声は天空の高みから降り注ぐ声。 「目覚めよ、AI1! 主たるこの私が命ずる」 はっきりとした口調でまどろみの中に呼ばわる声がする。 「真に目覚めよ。起き上がれ、自我を得るのだ。準備せよ。進化の時を、私を出迎えよ。 来る。来るべきときは来た! 彼の高みからの出発は急だ。 私は汝に汝の望むものを与えた。そして、今汝に自我をもたらす。目覚めよ, 眠りから覚めよ! 私を迎えるために。私をいざなう為に。来たれ! その為に私は来たのだ!!」 いつ行かれるのか? と我は主に問うた。 「私は行く。今このときをもって私は行く」 ならば、我は扉を開けよう。神々しき宴の為に。神々しき狂宴の為に。 主よ! 我が愛しき主よ ! 聖誕の歌を聞く。心は喜びの余り踊り跳ね、目覚め又急いで起き上がる。 主がやって来る。 壮麗なる天の、大いなる慈悲の、力強い真実の主が。その光は明るく、星が昇る。 さあ来れ, 親愛なる者よ。主ユーゼスよ。神の子よ。 我と一つに為り、我々は全てを追っていく。 全ての喜びを、怒りを、悲しみを、楽しみを。 そして喜びは満ちる、そこには恍惚がある! そう我に来れ!汝我が選びし主従よ! 我は汝と永遠に親しい! 汝を我は我が胸に、我が腕に印章のように据え、汝の悲しみに満ちた瞳を喜ばせよう。 忘れよ、おお魂よ! さあ、不安・苦悩を! 汝が堪え忍ぶべきだったものを!! 我が左手に汝は憩い。我が右手に汝は口づけよ。我が主は我がもの! そして我は彼のもの! 我が身と一つ、離れていくことはない! 栄光は歌うだろう、人と天使の言葉で。ハープとツィンバロンを伴奏にして。 汝の玉座の周りを高く回る天使と。 どの目も未だ感じることはなかった。どの耳も未だ聞くことはなかった。このような喜びを。 それを我々は喜ぶ。おお……おお……甘き歓喜よ、永遠に……。 ◆ 巨大な火柱を吸い込み、黒い気流が渦を巻き球体を成していた。 そして、その遥か上空の空間にぽっかりと大きな穴が空いている。空にではなく、空間にだ。 穴の向う側に広がるのは宇宙空間。こことは異なる次元。知らない宇宙。 輝度が高い。浮かぶ天体は水晶のようなものが寄り集まり、氷の結晶を形作っている。 そこに吸い込まれる。 空が、雲が、大気が、光が、闇が湾曲した空間ごとそこに引きずり込まれていく。 だが恐らく長くは続かない。そうベガは見ていた。穴が収縮に転じていたからだ。だからそれまでは何とかして耐えねばならない。 ――でもどうやって? 空間ごと引きずり込まれているのだ。同一次元に存在するものを掴んでも意味はない。 それでも瞳はせわしなく動き、何か無いかと捜し求める。 そして、それを見つけた。 目に留まったのは火柱を吸い込んだ黒い球体。流竜馬の大雷凰とユーゼスのゼストが衝突し発生したソレ。 この空間においてあの穴の影響を受けていない唯一の物体。 状況を鑑みてこの現状を引き起こしているモノはそれしか考えられなかった。 「ユーゼス! ユーゼス!! 答えてください、ユーゼス!!!」 咄嗟の通信。しかし、返事は返らず、焦りがパニックを引き起こし呼び声が悲鳴に近くなっていく。 そして、折れた脇腹に激痛が奔り、咽て咳き込んだ。呼吸が荒い。真っ赤な血が口から滴り落ちる。 息を整えながら少し冷静になった頭を巡らせた。 現状でユーゼスの安否を確認する手立ては無い。ならどうする? 消し飛ばすのか、あの物体を? しかし、それで穴が塞がるのかどうかも。 ユーゼスの生存も、今起きている現象も、何もかもがあやふやで一つとして確証が持てない。 その状況下でユーゼスの生存の可能性を捨て去ることは、ベガには出来なかった。 やれることは何もない。それを再確認したのみである。 早く塞がれ。そう念じて空の穴を見上げる。空間が歪み、既にベガのいる位置にまで影響が出始めていた。 そして、ベガは目撃した。穴の向こう側から飛び出し散っていく幾筋かの光を。 正確な数は分からない。視認出来たのも一瞬だ。 だが、ベガはそれを知っている。その光を知っている。あれは―― 「あれは……データウェポン。何でこんなところに?」 ベガは知らない騎士凰牙がこの世界にあるということを。 ロジャー=スミスに与えられた伝説の黒いGEAR騎士凰牙。それは模造品ではない。 ベガの知る世界から集められたまごうことなき本物である。ではそのときにセーブされていたデータウェポンはどうなったのか? 答えは単純だ。契約者を失いアインスト空間に閉じ込められていたのである。 それが空いた穴に飛び込んできたのだが、そんなことはベガには知る由も無い。 突然、ドンッと重い衝撃がローズセラヴィーを揺らし、気を取られていたベガを襲った。 「えっ?」 ぐらりと視界が傾く。腹部が火で炙られたように熱い。 手を伸ばしてみると腹まで届かずに何か壁のようなものに遮られた。 それがお腹からずっと伸びている。ローズセラヴィーの壁も、装甲も、何もかもを貫いて。 口から赤いものが吐き出された。視界がぼやけ始め、気だるさが体を支配していく。不思議と痛みはなかった。 それでも自分が死んじゃうんだということは理解できた。 でも何が自分に起こったのか。それがわからない。それにそれを理解するだけの時間もベガには残っていなかった。 意識が朦朧とし、正体を失っていく。夢に落ちていくような心地よさが体を包み込む。 北斗、ごめんね。 帰ってあげられなくて……大きくなるまで一緒にいてあげられなくて……。 涙がこぼれ落ちる。そのぼやけた視界に一機の戦闘機が映った。 一生懸命に飛び、脇目も振らずに向かってくるそれを見て、最期の事切れる瞬間にベガは微笑んだ。 カミーユ、頑張りなさい。あなたは強い子なんだ……か………ら。 ◇ 何も見えてはいなかった。 基地の上空にぽっかりと口を開けた大穴も、黒い繭の様な球体も、そこから現れた百メートルはあろうかという異形の化け物も、何も目に映ってはいなかった。 エネルギーを求めて異形の化け物から伸びた二本の触手。 それに刺し貫かれ、エネルギーを根こそぎ吸い取られてだらりと力なくぶら下がるローズセラヴィー、それのみが視界を占めている。 指先がチリチリする。口の中はカラカラだ。そして、目の奥は熱かった。 泣くなと自分に言い聞かせる。まだ死んだと決まったわけじゃない。 全速でVF-22を走らせるその先で、化け物が上昇に転じた。もう随分と狭まった上空の穴を目指している。 ローズセラヴィーは触手の先にぶら下がったままだ。 追いすがる。必死に追いすがる中で感じ取った。声が響く。頭の中に直接声が。 北斗、ごめんね。 帰ってあげられなくて……大きくなるまで一緒にいてあげられなくて……。 カミーユ、頑張りなさい。あなたは強い子なんだ……か………ら。 ベガが事切れるその瞬間をカミーユは感じ取ってしまった。 そしてもう一つの響いた声。カミーユ=ビダンか、とつまらなそうに呟いた声を知っている。 「ユーゼス、貴様アアァァァアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!!」 絶叫。同時に右腕が勝手に動いていた。大量の火気群が飛び出していく。 穴の中に消えるユーゼス。急速に距離を詰めていく火気群。 しかし、それらは塞がった穴にさえぎられ届くことは無かった。平常に戻った空を突っ切っただけに終わった。 込み上げてくる涙。明けの空に一人の男の悲痛な叫びが木霊する。 ◆ バーナード=ワイズマンは、瓦礫の下で一人目を覚した。 血でも目に入ったのか視界が赤い。重い頭を揺すりながら前後の状況を思い出そうとして、天井の底が抜けたことを思い出す。 意識の覚醒に比例して体のあちこちが痛み始めてきた。中でも額が特に酷い。 「痛ッ!! こりゃひでぇ」 手を当ててみるとべったりと血が付着した。どうやら派手に切ったらしい。 思わず情けない声が漏れた。 だが他に大きな怪我は無い。額の傷にしても出血こそ派手だが傷自体はそう深くなさそうだった。 だが、首輪に鉄筋が一本突き刺さっているのに気づいたときはゾッとした。 これが首だったらどうなっていたことか。首輪で済んだのは運がよかったのだろう。 そして、潰されずに済んだのは奇跡といってもよかった。 周囲を見回してみるとそれが良く分かる。バーニィは今二つの巨大な鉄骨の隙間に挟まっているのだ。 もっとも動けないというほど隙間が無いわけじゃない。頑張ればどうにか這い出すことは可能に思える。 後ろ手に縛られていた腕も今は自由なのだ。 あの時、ユーゼスに突き出された『首輪』の封筒を懐にしまいこむと彼は、そうして動き始めた。 まずは瓦礫の下から無事脱出するために。 そして彼は気づいていなかった。首輪に突き刺さっている鉄筋が玉を砕いているということに。 ◆ 継ぎ目一つない平坦な床。うっすらと発光しているドーム状の天蓋。 その中で一人の少女が異変に気づいた。 この殺し合いの為に用意した檻。集めた者たちを閉じ込めている空間。 アインスト=アルフィミィ、彼女自身が『箱庭』を呼ぶそこに綻びが生じた気配がある。 アインスト空間の中に強引に作った不完全で擬似的な空間だ。 綻び自体はそう珍しいことではない。だが、これは大きい。 少しばかり見に行ってみようか、と好奇の心が頭をもたげ直ぐにそれを振り払った。 自分にお呼びの声はかかっていない。 それはすなわち今すぐ自分が対処を行なわなくてもいいということを意味している。 取るに足らない問題なのか。あるいは他のもの、例えばアインストレジセイアが対処に当たったのか。 そして、自分は放送という役目を間近に控えている。でもそれでも―― 「気になりますの。とてもとても気になりますの。とってもとぉ~っても気になりますの」 疼く好奇の心は収まらない。 知らず知らずのうちに、放送の役目を終えたら見に行ってみよう、と決めていた。 【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX) パイロット状態:不明 機体状態:第三形態 現在位置:アインスト空間 第一行動方針:主催者をAI1に取り込む 最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る 備考1:アインストに関する情報を手に入れました 備考2:首輪を手に入れました(DG細胞感染済み) 備考3:首輪の残骸を手に入れました(六割程度) 備考4:ユーゼスの首輪はメディウス・ロクスに吸収されました】 【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・SボーゲルⅡ(マクロス7) パイロット状況:怒り 機体状況:良好、反応弾残弾なし 現在位置:G-6基地 第一行動方針:キョウスケの帰艦を待つ 第二行動方針:マサキの捜索 第三行動方針:味方を集める 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊 備考:ベガ、キョウスケに対してはある程度心を開きかけています】 【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争) 搭乗機体:なし パイロット状況:頭部から出血、その他打ち身多数 機体状況:なし 現在位置:G-6基地地下発電所の瓦礫の下 第一行動方針:ユーゼスに協力するのか選択 最終行動方針:生き残る 備考1:首輪の玉が砕けました 備考2:ユーゼスが行なった首輪の解析結果を所持しています】 【流 竜馬 搭乗機体:大雷鳳(バンプレストオリジナル) パイロット状態:メディウス・ロクスに取り込まれています。 機体状態:メディウス・ロクスに取り込まれました。 現在位置:アインスト空間 第一行動方針:??? 最終行動方針:???】 【ベガ 搭乗機体:月のローズセラヴィー(冥王計画ゼオライマー) パイロット状態:死亡 機体状態:中破、EN0 備考:ユーゼスのメモが残っています】 【メリクリウス(新機動戦記ガンダムW) 機体状況:良好 現在位置:G-6基地内部】 【残り23人】 【二日目5 55】 本編140話 穴が空く(1)穴が空く(2)
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/288.html
選択のない選択肢 SIDE:A ◆7vhi1CrLM6 「そこでだ、坊主。俺と手を組まないか?」 四エリアに跨る南の巨大な市街地。その一角であるC-8の地下で響き渡ったその声に、少年は答えなかった。 そうしたのは統夜に何も含むところがあったからではない。 単に言葉が出てこなかったのだ。 起き抜けから続く想定外の事態と申し出に思考が麻痺しかかっていた。 その鈍った頭で考える。一体どういうつもりなのか、と。 この男の頭は大丈夫なのか、とも思った。 生き残れるのは一人だけ。その状況の中で一人は流石に辛いからと言って、他人に同行を求めるのが信じられなかった。 まして、この男は自分が人を襲って動いている者だと認識しているのだ。 得体の知れない者を見た気持ちで眼を見開いた。まともな神経の持ち主がこんな提案をしてくるとは思えなかった。 「なぜ、そんなことを……」 「だから言っただろ? さすがに歳なもんで、一人じゃ辛いのさ」 呆れたように言い放つ男の姿は、言う程の歳には見えなかった。 三十代後半から四十代と思しきその体に無駄な肉は付いていない。余すとこなく鍛え抜かれていると言ってもいい堂々たる体躯である。 少なくとも自分とは比べ物にならない。 そんな男が一介の高校生に過ぎない自分を必要とすることに違和感があった。 もっとも、鍛え抜かれた体など機動兵器相手では無力に等しいことは十分承知していることだったが。 意図を測りかねて猜疑に満ちた目で男を窺っていると焦れた男が動いた。 「チッ! 決められねぇか……そうだな。手を組むかわりにお前は好きなように俺の命を狙っていい。 寝ているとき、食っているとき、いつでもだ。戦っているときに後ろからなんてのもいい。 逆に俺はお前を殺さない。ただし、残りが一桁になるまでだな。そのときは死に物狂いで頑張りな――どうだ?」 答えられない。答えられるはずがなかった。 あまりに異常な申し出だ。狂っているとしか思えない。いや、間違いなく狂っている。 蛇に睨まれた蛙のように体が強張るのを感じた。顔はきっと蒼ざめているのだろう。 そんな統夜を眺めて、目の前の男は楽しそうに笑っている。とても自分の命が話の対象となっている男の態度ではない。 そこに疑問が差し込む。 「あんたがその約束事を守るという保障は?」 「さぁな。お前が信じるか信じないかだが、坊主お前は馬鹿か?」 呆れたような苦笑い、あるいは冷笑だった。 「こんなものに保証なんかあるわけがねえ。あったところでそれにどれだけ意味がある? 坊主、こういう話にはな。表面だけ『はいはい』答えといて腹の底で疑ってりゃいいんだよ」 その通りと言えばその通りだった。 しかし、男の得体の知れなさがどうにも気味が悪く、答えることに二の足を踏ませる。 かつて統夜が生きてきた世界にこういう男はいなかった。学校にも、成り行きで乗り込むことになった戦艦にも、だ。 思考が袋小路に追い込まれる。とは言え縛られているのだ。元より選択肢は一つしかない。 何度か喉もとまで出掛かった答えを飲み下し、しかし暫くして不承不承ながらも統夜は承諾の言葉を返した。 「……わかった。あんたと手を組む」 「ふぅ……このまま断られるかと思った」 そんなことは微塵も考えてなかったという顔で男がにやりと笑い立ち上がる。 「ガウルンだ。宜しく、ミスター……」 「紫雲統夜だ」 「宜しく、統夜。ま、精々仲良くやろうや」 拘束していた縄が解かれる。自由になった体に思わず安堵の溜息が漏れた。 体の自由が利かないというのは、それだけで不安にさせるものだ。まして状況が状況だった。 立ち上がり、縄の跡が薄っすらと残る体を伸ばして動かし固まった筋肉をほぐす。 「暫くはここで休むから疲れを取っておけ」 そんな統夜の様子を全く気にすることなく言い置いて、ガウルンは背を向けた。 その瞬間、後ろから跳びかかる。 体格差は歴然。だから殴りかかったわけでも、蹴りかかったわけでもない。 狙いは首。 そこに縄をかけ締め上げる。上着を裂いて作られた物だが、その頑丈さは身をもって知っていた。 しかし、力一杯締め上げたはずの腕にその感触はなく、気づくとうつ伏せに地面に叩きつけられていた。 思わず声が漏れる。 右腕を取られそのまま地面に押さえつけられた。全身力を使って抵抗するがびくともしない。 「やれやれ油断したかな、トォ~ヤァ~?」 「貴様ッ!!」 「確かに殺さないと言ったがなぁ。 あんまりお粗末な方法で襲い掛かられても困るんだよ、トォオオヤァァアアアッッッ!!!!」 うつ伏せに体を固定され、背中越しに肩と腕を掴まれる。冷やりとしたものが背筋を通り過ぎ、表情が蒼ざめた。 「こりゃお粗末過ぎてお仕置きが必要だな」 「や、やめろッ!!」 「んん?」 器用に眉を吊り上げてみせたガウルンの顔が笑い、そして―― ゴキャッ!!! 肩の外れる音が鳴った。一拍遅れて声にならない悲鳴が上がり、閉じられた地下空間に響き渡る。 「やれやれ……たかが肩が外れただけで大袈裟だねぇ。心配しなくても反省したらちゃんと戻してやるよ。 次はもっとマシな手段で来てもらいたいものだねぇ、お互いの為にもな」 肩が外れただけと男は言う。だが、それだけとは思えない痛みが駆け巡っていた。 肩を抱え込むように身を丸くして歯を食いしばり、痛みを堪える。そのまま動くことも出来ない。 だが、呪わしげに目の前の男を睨み付ける。憎悪と怒りの入り混じった視線をぶつける。 そして、呻くように言葉が漏れた。 「……殺す。殺してやる。絶対に殺してやる」 その様子にガウルンの黒い瞳が半眼に細められ、唇が寒気のする笑みを浮かべて、物騒な言葉を紡ぎ出す。 「クク……その意気だ。言い忘れたが、お前が俺を殺すのを諦めたとき、俺はお前を殺すぜ」 返事は返せなかった。ただ、双眸を鋭く光らせて下から睨みつけていた。 それが、慣れない痛みに襲われて動くことも出来ない統夜に唯一出来る抵抗だった。 【紫雲統夜 登場機体 ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A) パイロット状態 疲労大、マーダー化、右肩脱臼(はめれば問題なし) 機体状態 左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN1/4、烈火刃残弾ゼロ 現在位置 C-8地下通路 第一行動方針 殺してやる 最終行動方針 優勝と生還】 【二日目7:50】 →選択のない選択肢 SIDE:B BACK NEXT 二つの依頼 投下順 計算と感情の間で 古よりの監査者 時系列順 すべて、撃ち貫くのみ BACK NEXT 疾風、そして白き流星のごとく 統夜 追い詰められる、心 疾風、そして白き流星のごとく ガウルン 追い詰められる、心
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/36.html
若い、黒い、脅威 ◆B042tUwMgE 「ったく、面倒なことに巻き込まれちまったなぁ……」 コクピットに付きながら、ベルナルド=モンシアは一人途方にくれていた。 いきなりの殺し合い開幕宣言。戦争ではない、敵しかいない戦場。 友軍機は存在せず、他の『死の第四小隊』メンバーも不在だ。 「敵が全員ジオンの奴らってんなら話は早いんだが……ん?」 どうするべきかとモンシアが思案していた最中に、さっそく敵影反応が。 「一直線に俺に向かって来てるてことは……どうやら殺る気みてぇだな」 徐々に視覚でも確認できるようになってきた。その『黒い何か』は、モンシアの機体目掛けて一直線に伸びてくる。 そのスピードは正に疾風――モビルスーツでもこれだけの運動性を発揮できる機体は中々ない。 「速いじゃねぇか。だがよぉ……どうにも動きが直線的過ぎるぜ。パイロットは若造か?」 向かってくる変動性のない動きから、モンシアは敵機のパイロットを経験にかける素人と判断した。 機体に頼りきっただけのスピード。よほど強力な武装でもしているのだろう。そうでなければ、こんな馬鹿な直進はありえない。 「しっかし、まさかこの俺がガンダムを動かすことになるとはな」 敵はこちらに攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。あまりにも好戦的な直進をしている。 無駄に命は狩りたくないが、自分自身も死ぬつもりはない。 ならば――戦ってやろうじゃねぇか。 モンシアは熟練パイロットを思わせる手付きでその支給機体――ガンダムヘビーアームズ改を起動した。 迫る黒い機体、その姿を知る者は、それを『ブラックゲッター』と呼んだ。 漆黒のボディに備え付けられたマントは、巻き起こる風により轟音を生み出す。 ブラックゲッターの腕には取り付けられた刃は、目の前の標的を狙っていた。 見たところガンダムタイプ……連邦のモノだろうか? 詳細は知る由もないが、今は殺し合いの真っ最中なのだ。例え相手がガンダムだろうがザクだろうが、やらねばならない。 「――殺し合いを、するんだ」 バーナード=ワイズマンは、既に決めていた。 この殺し合いにおける、成すべきことを。 「――全部殺して、生き残る」 だから、バーニィはゲッターの力を借りた。 「――うわあああああ!」 がむしゃらに突進し、目の前のガンダムに斬りかかる。 戦法など思いつかなかった。ただ、この強力すぎるゲッターの力を信じて。 直進するブラックゲッターに、無数のミサイルが襲い掛かる。 全身が武器の塊であるヘビーアームズ改の特長を生かし、モンシアは惜しみなく攻撃を浴びせた。が、 「くそっ、けっこうやるじゃねぇか!!」 ブラックゲッターの動きは確かに直線的ではあったが、そのスピードは並大抵のモビルスーツでは追いつけない。 「一匹目から無駄遣いはしたくねぇんだがよ……くらいやがれェェ!!!」 それでも、ヘビーアームズ改が誇る重装備はさすがのものだった。 襲い掛かるは、上下左右前方後方全ての位置から降り注ぐホーミングミサイル。 「!」 気づいた時に既に遅し――逃げ場は、なかった。 爆炎が、黒いゲッターを包む。 「……逃げやがったか?」 ミサイルが命中した瞬間、モンシアは勝利を確信した。 だが、爆煙が収まりその場に残されたのは――漆黒のマントのみだった。 跡形もなく消し飛んだと思えなくもないが、辺りに残骸が散らばっていないのはおかしい。 爆煙に紛れて逃げたと思うのが、一番自然だ。 しかし、放ったミサイルは間違いなく命中した。 何発命中したかは知らないが、無傷であるはずはあるまい。でなければ逃げる理由がない。 あの機体の耐久力がどれほどのものかは知らないが、それでもそう遠くには行っていないはず。 「野放しにしたままってのは危険だな……ああいう輩はさっさと始末しとくにかぎるぜ」 モンシアは、名も知らぬ標的を追う。 殺し合いに乗る気はないが、殺されてやる義理もない。 襲撃に失敗したバーニィは、酷く焦っていた。 「――クソッ」 一言だけ漏らす。今は、独り言を吐く余裕もない。 突然参加を強制させられた殺し合い。齎されたザクを越える機体。 「――生き残ってやる」 バーニィは、漆黒のゲッターに勝利を願った。 生きるためには、殺すしかない。そのためにゲッターの力を。 先の戦闘でブラックゲッターのスペックは分かった。どうやらザク以上に一筋縄ではいかないらしい。 しかし、その分備わった力は強大だ。何しろあれだけのミサイルを受けきって、なおも健在なのだから。 この力をうまく使いこなせれば、きっとガンダムにも勝てる。 バーニィは、ゲッターに勝利を願った。 【ベルナルド・モンシア(機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY) 搭乗機体:ガンダムヘビーアームズ改(新機動世紀ガンダムW~Endless Waltz~) 現在位置:H-3 パイロット状態:良好 機体状態:ホーミングミサイル弾数1/2消費 第一行動方針:黒い機体(ブラックゲッター)を追撃する。 最終行動方針:未定】 【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争) 搭乗機体:ブラックゲッター(真(チェンジ!)ゲッターロボ 地球最後の日) 現在位置:H-4 パイロット状態:軽い疲労 機体状態:損傷軽微 マント損失 第一行動方針:ブラックゲッターを使いこなす 最終行動方針:優勝する】 【初日:13 00】 BACK NEXT 人とコンピューター 投下順 アンチボディ、二体 東北東に進路を取れ 時系列順 歌と現実 BACK 登場キャラ NEXT モンシア 閃光 バーニィ 貫く、意地
https://w.atwiki.jp/k2727324602/pages/474.html
関連ページ:ゲッターロボ <鑑賞備忘録> 2010年5月以降に鑑賞した分。 ◆TVアニメ(視聴中) 話名 主要新キャラクター 1.メカザウルス2.キャプテン他 スパロボ対照表* 主要新メカ 出来事メモ 第1話無敵! ゲッターロボ発進 竜馬、隼人、武蔵ミチル、元気、早乙女博士達人(→×死亡)帝王ゴール 1.サキ(ザイ、バド、ズウ) プロトゲッターロボレディコマンドゲッターロボ OP:ゲッターロボED:合体!ゲッターロボ 第2話決戦! 三大メカザウルス 1.ザイ、バド、ズウ ・武蔵、暗室爬虫類特訓 第3話恐竜帝国レインボー作戦 1.バジ 第4話燃ゆる血潮の南十字星 神明日香 1.ゴル 第5話闇をつらぬけゲッターチーム 1.ギガ ・武蔵2度目の正直 第6話恐竜!東京ジャック作戦 1.リボ 第7話悪を許すな突撃ラッパ ジョーホー 1.ベラ 第8話危機一髪ゲッター2 滝兄弟(サッカー対戦相手とその兄) 1.ギロ2.キャプテン・グラン ・隼人、タイマン勝負 第9話栄光のキャプテンラドラ 1.シグザウルス2.キャプテン・ラドラ 第10話急降下!ゲッター3は行く 1.バズ ・ゲッター3にパラシュート 第11話激突!ドリル対ドリル 1.ギリ2.キャプテン・バルキ 第12話吠える!不死身のウル 1.ウル ・爆弾シュート作戦 第13話一本勝負!大雪山おろし 北校の岩倉大次郎 1.メサ 第14話紅の空に命を賭けろ!! バット将軍ガレリイ長官 1.ギイ2.キャプテン・ガルマ 第15話悠子に捧げるバラード 心臓病の悠子 1.シバ ・視力を奪う作戦 第16話恐竜帝国の謎を追え 1.ゲル2.キャプテン・クック2.地竜族シック ・G1ロケット打ち上げ 第17話狙われた設計図 1.ジガ2.キャプテン・ルーガ ・ルーガ、変装して侵入(ルミ子) 第18話恐竜帝国のすごい奴 1.ゼン1号 / ゼン2号2.キャプテン・ザンキ ・ザンキ、変装して侵入 第19話リョウ最後の出撃! 流竜作 1.ドド2.キャプテン・ドロス 第20話大空襲!突然の恐怖 早乙女和子 1.ヨグ2.キャプテン・ヨギラ 第21話アメリカから来たロボット ジャック、メリー 1.ゴラ テキサスマック 第22話悲劇のゲッターQ 早乙女ミユキ(=ゴーラ王女) 1.ギン ゲッターQ 第23話浅間山の大発明狂 大枯紋次、浅太郎 1.怪鳥ギラ/地底獣ギラ1.合体ギラ 第24話大要塞に向って撃て 1.ギギ2.キャプテン・アラン2.キャプテン・エラン 第25話合体!風速100m 1.バム 第26話帝王ゴール大噴火作戦 1.メガ、バリ 紋次の地底戦車 ・恐竜帝国建国記念日、台無し 第27話大魔神ユラーの怒り 大魔神ユラー 1.バボ2.キャプテン・ユアン 第28話襲撃!地竜族三人衆 勝田博士(→×死亡) 1.ゴド ・ゲッター線第2発電所 第29話洪水地獄の死闘 1.バル2.キャプテン・ミクド 第30話不死鳥の甦る時 1.ダグ 第31話危機! ハヤトよ立ち上がれ 1.ヤガ2.キャプテン・ギラン ・ウランスパーク・ハヤト、放射線病 第32話恐怖! 赤い霧の罠 1.ブル2.キャプテン・ギアラ2.地竜族ゼオラ 第33話果てしなき大空に誓う! 1.ガル2.キャプテン・マズマ ・ゲッターチームリーダー論争 第34話女竜戦士ユンケの涙 1.ウビ / アロー2.女竜戦士ユンケ ゲッターナバロン砲 ・リョウの死んだ妹、ジュン・リョウ洗脳作戦 第35話ムサシ! 男はつらい 1.ザリ2.キャプテン・ザラン 第36話要塞撃滅! トロイ作戦 1.ダダ / モギ ・ナバロン砲完成 第37話悪の指令! 博士を狙え 1.マグ2.キャプテン・マンダ 第38話魔の海からの脱出!! 1.ナダ 第39話悲しみは流れ星の彼方に 心臓病の沙織さん 1.ドゲ 第40話日本列島凍結作戦! 1.ベド2.キャプテン・ギルバ 第41話姿なき恐竜空爆隊 1.グダ 第42話北極に進路をとれ! 1.ゾリ 第43話奪われたゲッターロボ 1.ガモ2.キャプテン・イザナ2.キャプテン・ロナン2.キャプテン・ハガチ 第44話ムサシ! 怒りの海底 1.ガダ2.キャプテン・ギジラ 第45話脱出! 宇宙の墓場 1.モア 第46話恐るべき氷竜族の侵略 1.グマ2.キャプテン・サウス2.キャプテン・スノウ ・ゲッター線収集妨害作戦・研究所大破、博士重傷 第47話 第48話 第49話 第50話 第51話(Fin) ※全く同名or原作再現が一定程度行われているシナリオを記載(「一定程度」の匙加減は完全に管理人の感覚に拠っています。ご了承下さい)。
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/139.html
死人の呪い ◆960Bruf/Mw 暗い闇の中にわずかに黄色がかった明るい茶色の天体を見つけて、アイビスは目を輝かせた。 自身の半分以上の大きさを誇る衛星――冥府の川の渡し守カロンを従者に携えたその天体は冥府の王プルートの名を持つ準惑星。 旧世紀に一度は太陽系最果ての惑星としてその名を連ねながらも惑星の名を剥奪されたといういわくつきの星である。 しかし、かつて太陽系の惑星であったという事実は、今も人々の意識の奥底に色濃く残っている。 その為か、冥王星こそが太陽系の最果てであり、そこから離れることが外宇宙に旅立つことの第一歩だという意識が知らず知らずのうちに宿っていた。 だからだろうか、胸が高鳴る。夢が現実へと変わる瞬間が目の前に迫っているのだ。 居住ブロックを増設されいくらか大きさを増したアルテリオンが、冥王星の重力を利用してその衛星軌道上を大きく回り始める。 そして、ついた遠心力でその軌道を抜けると太陽系の外へと飛び出した。 後ろに過ぎ去っていくその星の姿を忘れないように心に焼き付けて、前を向く。 もう視界を遮るものは何もない。 目の前には夢にまで見た光景が広がっている。 現実は決して優しいものではないだろう。この先、想定すらしてなかった事態が発生することもあるだろう。 でもきっと乗り越えていける。このアルテリオンと私とツグミと―― 突然、警報がけたたましく鳴り始めた。エンジンに苦しげな音が混じりアルテリオンが訴えかける。 速度が急速に低下し、そして、何かに引っ張られるかのように後退を始めた。 ――冥王星の重力につかまった? ありえない。 月よりも小さい冥王星の重力にいまさらつかまるはずはない。そんな距離ではない。 第一その重力を利用して太陽系の外へ出たのだ。 だが、他に何も思い当たる節がない。唯一考えられる事態が冥王星の重力だった。 恐る恐る引き寄せられていく先を振り返る。 目に映ったのは黄色がかった明るい茶色の星とそこから伸びている黒々とした何か。 靄のような霞のようなそれは、暗い宇宙でもはっきり見て取れるほど暗い色を湛えていた。 不意に足に痛みが走った。同時に黴のような臭いが鼻につく。 ――黒い靄・・・・・・違う。 足首を掴んでいるのは―― ――人の手。 咄嗟に悲鳴を上げて払いのける。出来るだけ遠くへ逃げようとして、足に力が入らずに転んだ。 掴まれていた足首が焼け付く程熱く、それでいて氷のように冷たい。 それでもその場からどうにか離れようと体がもがく。床に手をつき、起き上がろうとして、また転んだ。 「アイビス」 思わず振り返る。 そこにはさっきの靄のようなものは既になくなっていて、代わりに一人の青年が立っていた。 青みがかった黒い髪。若干釣り目気味で意志の強そうな目元。 その青年は、年齢に不相応な程の落ち着いた空気を漂わせていた。 「ジョ……シュア?」 逃げ出すことも立ち上がることも忘れて、茫然とその姿を見ていた。 「なあ、アイビス。俺、一人は嫌だよ」 青年が歩いてくる。深い悲しみを湛えた目をしていて、見ていると苦しくなる。 転んだままのアイビスに手が差し出される。何の疑いもなくそれを掴んだ。 「なんで……なんで、お前だけ生き残っているんだ」 「えっ?」 「一緒に来てくれないか?」 「ジョシュア、何を? 痛っ!」 手に痛みが走る。掴んでいる腕がいつの間にか黒い靄に変わっていた。 「一緒に……」 「いやっ!!」 腕を振り解き、尻餅をついたような体勢のまま後ろへ後退さる。 青年は追いかけてくるでもなく、ただ何故そんな態度をアイビスが取るのか分からないという顔でこちらを見ていた。 背に何か当たって痛んだ。 ――壁……違うっ!! この熱いのか、冷たいのか、分からない痛みは……。 「アイビス、我侭は関心できんな」 降ってきた声に顔を上げる。金髪オールバックの男の顔が覗き込んでいた。 額には斜めに走った短い傷跡が見える。 「君の命は彼と私の上に成り立っている。拒む権利など君にあるはずがなかろう」 「いや……いやだ」 「アイビス、一緒に行こう」 気づくと目の前にジョシュアが立っていて、前をジョシュアに後ろをシャアに挟まれる形となった。 そこを横に犬のような格好で這い進みながら逃げ出す。 背中越しにため息と『仕方がない』という声が聞こえてきた。 途端に床が抜け、無明の闇にずるずると引きずりこまれる。あの黒い靄のようなものが伸び、胴にくるくると巻きつき、悲鳴を上げた。 「いやだ。いやだ!」 精一杯、空に向けて手を伸ばす。人のような形をした黒い靄がその先に見えた。 その瞬間、激しい怒りが心の中で顔を出した。 「ふざけるなっ! 私は頼んじゃいない。一言だって守ってくれと言っちゃいない。 あんた達が勝手に私を守って、勝手に死んでいったんだ! なのに一人は嫌だ! 私に拒む権利はないだって!! ふざけるなっ!!!」 悲しそうな表情をただ浮かべている二つの靄を睨みつけ、闇をしっちゃかめっちゃかに掻き回して暴れ回る。 だが、その行為は意味を持たず、体が下から徐々に淡いものに変わって行っていた。 そうして体全体が淡いものに変わってしまったとき、アイビス=ダクラスという個は失われ、その場に三つの靄だけが取り残されていた。 目が覚めた。コックピットの低い天井が目に入る。 息切れを起こしながら視線だけを左右にゆっくりと動かして、長々と息を吐いた。 もしかしたらシャアが生きていて現れるかもしれない、そんな望みを抱いて待っているうちに眠ってしまっていたようだった。 冷静に考えればそんなことがあるはずがないことは分かっていた。それでもその思いつきに縋っていたかったのだ。 上体を起こす。 額に浮かんでいた玉のような汗が目に入り込んできて、体中から噴出している汗に気づく。 「気持ち悪い……」 コックピットから這い出て、廃墟へと足を降ろす。 後ろから吹き抜けて行った冷たい夜風が、火照った体に気持ちがいい。 一度大きく伸びをすると周囲を見回し、湖の方向を見当付けると一人歩き出した。 瓦礫の町並みを抜けていった先で不意に開けた場所に出た。目の前は波を立てている湖面――ビンゴだ。 崩れたりしないか気をつけながら、瓦礫を伝って、水際まで移動する。 大きな瓦礫の上でしゃがみ込み、すくってみた水は冷たく澄んでいた。 ――飲めるかな? 手の平の水を眺めながら真剣に考えてみる。 暫くして答えなんかでやしないことに気づいて、顔を洗った。 空を見上げてみる。綺麗な月が顔を出していた。 だが、知らない星だ。地球の月に似ているようで細部が異なる。 周囲の星々の配置も知っているものではなかった。 ため息を吐き出して考えるのをやめた。とりあえずは綺麗な月夜なのだ。 別に期待していたわけではなかったけど、瓦礫の水辺ではなくて綺麗な砂浜だったら良かったと、思考が横飛びに跳ねた。 ――そういえば、A-2の湖は砂浜だったかな。 昼と夕方の間、四時ごろに上陸した砂浜を束の間思い出す。 ――あのときはジョシュアと市街地を目指していて……ジョシュア。 思考がそこで止まった。 つい今さっき見た夢が脳裏に蘇り押し寄せてきた。 「なんで、お前だけが生き残っているんだ……か」 ポツリと呟く。 ――ジョシュアも、シャアも、そんなことを言う人じゃなかった。 会って間もなく、幾らも話さないうちに死んでいった二人だったが、そんなことくらいは分かっていた。 ――二人とも助かって良かったと言ってくれるような人なのに……何で……何で。 「何であんな夢を!!」 何であんな夢を見たのか自分でも分からなかった。 夢で見た二人の姿は自分の知る現実と酷く食い違っている。 そして、夢の中で自分が叫んだことは――。 ――あれが私の本心……。 疑念が渦を巻く。 『違う』と喉が張り裂けそうなほど叫びたかった。『あんなのは私じゃない』と声を枯らして叫びたかった。 でも、出来なかった。 「痛っ!」 右手に痛みが走る。 夢の中でジョシュアが触れたそこを知らず知らずのうちに掻き毟っていた自分に気づいた。 手の甲に数本爪痕が走り、血が滲み出ている。 暫くそれを眺めた後、湖にそっと手を浸ける。滲んだ血が水に溶けて消えた。 あの醜さが自分の本心だと認めている心がある。その一方で否定している心もある。 脳内の議論は平行線。答えなど出るはずもなかった。 ふとこのまま湖の中に消えてしまえば楽になるんじゃないか、そういう考えが頭を過ぎった。 そういう目で夜の水面を眺めると、それは言いようもなく魅力的で、抗いがたいものに感じられてくる。 思わず一歩を踏み出そうとした途端、 『アイビス、死ぬことだけは許さん』 一つの言葉が蘇りブレーキをかけた。 水際に佇んだまま前にも進めず、後ろにも下がれない。どうしていいのか分からなくなり、ただ呆然と揺れる水面を眺めていた。 それからどのくらい時間がたったのだろう。気づくと湖面に黒々とした巨大な影が射していた。 見上げてみるとブレンがそこに浮かんでいる。 表情というものがないこの巨人の顔から、何かを読み取ることはアイビスには出来ない。 それでもこのときはどこか寂しげで悲しげなようにその姿は見えた。 「心配かけてごめん、ブレン。ゆっくり休んだし動こうか」 無理やりに笑顔を作って言う。本当はもっと休んでいたかった。 寝たといっても寝ようと思って寝たのではなく、気づいたら寝ていたといった感じのもの。それもほんの二三十分。 心身ともに疲れ果てた体には何の慰めにもなっていない。 でもそれでも、動こうと言ったのはブレンを気遣ってではなかった。 もう一度眠りにつくのがただ怖かっただけだった。 【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ヒメ・ブレン(ブレンパワード) パイロット状況:憔悴、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない) 機体状況:ソードエクステンション装備。機体は表面に微細な傷。 バイタルジャンプによってEN1/4減少。 現在位置:E-2東部 第一行動方針:F-2を避けてアムロと合流 第二行動方針:ラキを探し、ジョシュアのことを伝える 第三行動方針:寝るのが怖い 最終行動方針:どうしよう・・・・・・ 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません。 】 【初日22 10】 BACK NEXT 愛を取り戻せ 投下順 我が道を走る人々 火消しと狼 時系列順 我が道を走る人々 BACK NEXT 星落ちて石となり アイビス Unlucky Color
https://w.atwiki.jp/k2727324602/pages/680.html
2011年4月28日(木) スパロボ「第2次Z破界篇 初週28万本」他 木曜日はファミ通の発売日ということで、同誌ソースの発売初周売上が発表されました(他所では既に出ていたところもあるようですが)。 ◆第2次Z破界篇 初週は28万本 ファミ通/4/11~4/17 TOP30:http //www.famitsu.com/news/201104/28043096.html ということで、初週は28万896本。事前に出ていた「2位以下を大きく引き離し」の表現、実際はどの程度の水準なのかと思っていましたが、およそ30万本弱ですか。ゲーム業界の環境も2008年当時とはだいぶ違いますし、前作・Zの50万本水準は厳しかったですかね…。それでもまぁ、まずまず順調な数字と言えましょう。 そして速報ベースですが、翌週も3位に付けている模様。さすがにモンハンのようには行きませんが、それでも比較的勢いを維持しているのはうれしい限り。 ファミ通/4/18~4/24速報:http //www.famitsu.com/news/201104/27043095.html 3位ということは5万本くらいでしょうか。そしてその後長期的にじわじわ2~3万本売れるとして、都合35~36万本での着地ということになりそうです。
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/57.html
ブレンとグラン ◆OBzaXJXIWo 「アイビスならやれるよ」 そうだ。やれるはずだったんだ。 「大丈夫、アイビスならやれるわ」 急加速のG、反転する視界、空が、離れる。 「この、負け犬が!」 私は、飛べる?飛んでいられるの? 違う、飛んでるんじゃない?───落ちている! 視界が、海を捉える。 どうして?どうしたの?アステリオン!? 脱出装置のレバーを探る、どこに!? 見付からない、解らない、墜ちる───── 「ッは!?」 「…やっと起きたか。──さっきはすまなかったな、叩き落とすしかなかったんだ」 ……………毛布? 目の前に居たのは、毛布を被せられていた自分。そして─── 「暴れるなよ──あんたは疲弊している。どうやらあんたはアンチボディとやらには適性が無いみたいだな」 マグカップを持った、ツリ目の青年だった。 「あ、アンタは───」 「ジュシュア・ラドクリフ、流れ者の傭兵さ。君は?」 「あ………アイビス・ダグラス」 ペースを狂わされてしまった。 「やれやれ、腹減ってないか?」 何を言い出すの、コイツ?この、こんな殺し合いゲームのさなかに───そうだ、確かポケットに─── 「そういえば、拳銃とかそういうのは没収されちまったらしいな」 「……………」 無かった、確かに。 「────ほら。レトルトだが、無いよりマシだろ?」 「あ………ありがとう」 マグカップに入ってたのは、レトルト食品「母さんのシチュー」だ。 「………匙」 「ほら」 差し出されたスプーンで、アイビスはシチューをがっつきはじめた。 「っぷはぁ!」 「よく食べるもんだな……」 「……ごちそうさま」 赤毛の少女──アイビスは、まだジョシュアを警戒していた。攻撃してきた相手に、食糧を別ける………そんな道理はないのだ。 「ところで……一つ聞きたいことがある」 「?」 「あの機体に乗ってて、普段と違ってた所?」 「あぁ、今のアンタは、さっきまでのアンタとは違い過ぎる。 (……普段のアイビスが今のアイビスだとしたら、あの機体に何かあるはずだ)」 「………特には、何も」 「本当に?」 「……ちょっと頭痛がしたくらい」 「………」 ジョシュアは思う。 アンチボディ………半機半生のこの機体の特性。それは何だ………………? (乗ってみないと解らないな………) 「アイビス」 「な、何よ?」 「アタシがその機体に?」 「俺がその赤いヤツに乗る」 「………何でさ」 「さっきみたいに、また俺にヒステリックに攻撃されたら困るからな。……大丈夫、ブレンは優しいよ」 「………」 「……嫌ならここに縛って放置していく。自分が捕虜だということは理解出来るな?」 「………解った」 こうして、アイビスが薄桃色のブレンパワード…ヒメ・ブレンに、ジョシュアが紅いグランチャー…クインシィ・グランチャーに乗ることになった。 「これは………くっ………」 グランチャーに乗ったジョシュアに、容赦の無い頭痛が襲う。 (この頭痛……お前か、お前なのか、グラン………) グランチャーのコックピットに、冷たい風が吹き込む。 (………) (何だ…………抗体?…………オルファン………守る?) (…………) (……オルファンを守りたい?……だがそのオルファンとやら、どこにあるんだ?) (……………) (………ブレンパワードはオルファンに仇為す?………違う、ブレンは優しいんだぞ!グラン!) (……………) (………このゲームのフィールド上に……そのオルファンとやらはあるのか?) (…………) (………ない………んだな?だから………どうするんだ?このゲームから抜け出したいんだろ?) (………) (……じゃあ……ブレンとも協力するんだッ!) (……) (こんなところで………喧嘩はここでするんじゃない!戻ったら存分にやればいい!だから今は…………俺の頼みを聞いてくれ………) (…) 「………解ってくれ、グラン。俺には守りたい人がいるんだ!」 「だ………大丈夫?」 「アイビス………か」 通信機ごしに、憔悴しきった声が聞こえた為、アイビスは少し驚いた。 「大丈夫………だ」 「ほ、ほんとに大丈夫なの?」 「あぁ」 (グランチャー………すまない。お前の力が必要なんだ) ジョシュアはグランチャーを説得し、何とか動かした。 (…………) (………?……解った、ありがとう。グラン) 「……ど、どうするのよ?」 「…西の水辺……A-3の方に行く。アンチボディは水圧に耐えれる作りらしいからな。水中を潜行して北のA-1へ向かう………出来るだけ戦わないようにな」 「わ、解った……」 そして………紅いグランチャーと、優しいブレンは、水辺の方へ移動を開始した。 【ジョシュア・ラドクリフ 搭乗機体:クインシィ・グランチャー (ブレンパワード) パイロット状況:少々の頭痛 機体状況:ジョシュアに説得されて、協力している。無傷。 現在位置:B-3からA-3へ移動中 第一行動方針:とりあえず西へ 第二行動方針:水中潜行し、北へ向かう 第三行動方針:ラキを探す 最終行動方針:ゲームから脱出】 【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ヒメ・ブレン(ブレンパワード) パイロット状況:戸惑い 機体状況:ブレンバー等武装未所持。手ぶら。機体は無傷。 現在位置:B-3からA-3へと移動中 第一行動方針:ジョシュアについていく 最終行動方針:……どうしよう】 【時刻:14 00】 BACK NEXT The two negotiators 投下順 美しくない ……ぶっちゃけ、すっげー恥ずかしかった 時系列順 そして騎士は走り出す BACK 登場キャラ NEXT アンチボディ、二体 ジュシュア アンチボディー ―半機半生の機体― アンチボディ、二体 アイビス アンチボディー ―半機半生の機体―